ID番号 | : | 00242 |
事件名 | : | 時間外勤務手当等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 静岡県教職員事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 校長の指示により職員会議に出席した公立学校の教職員らが、右職員会議出席は時間外勤務に当るとして時間外勤務手当の支払を求めた事件の控訴審。(控訴棄却、労働者勝訴) |
参照法条 | : | 労働基準法37条 民法92条 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 教員の職務範囲 賃金(民事) / 割増賃金 / 違法な時間外労働と割増賃金 賃金(民事) / 割増賃金 / 支払い義務 |
裁判年月日 | : | 1969年2月13日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (行コ) 7 |
裁判結果 | : | 棄却(上告) |
出典 | : | 高裁民集22巻1号136頁/行裁例集20巻2・3合併号149頁/時報546号42頁/東高民時報20巻2号33頁/タイムズ230号130頁/教職員人事関係裁判例集6号183頁 |
審級関係 | : | 上告審/01260/最高一小/昭47. 4. 6/昭和44年(行ツ)26号 |
評釈論文 | : | 慶谷淑夫・地方公務員月報70号9頁/坂本重雄・季刊労働法72号49頁/深山喜一郎・昭44重判解説166頁/有倉遼吉・判例評論127号9頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約―労働契約上の権利義務―教育の職務範囲〕 教職員が右職員会議に出席することがその職務の範囲に属するか否かについてみるに、学校教育法第五一条または同法第七六条によって本件各学校に準用される同法第二八条第四項は、教諭の職務として、「教諭は児童の教育を掌る。」と定めているところ、右認定の事実によれば、教職員が職員会議に参加することはこれによって、校務を掌理する学校長(同法第二八条第三項、第五一条、第七六条参照)の教育方針を知り、またその教育方針に各自の意思を反映させ、かくして学校教育の向上をはかり学校全体として教育が一貫してかつ円滑に行われる作用を有するものであるということができるから、それへの参加は「児童(生徒)の教育」のために欠くべからざるものであるというべく、かような職員会議が勤務中に行われた場合はもちろんのこと、これを超えて正規の勤務時間以外の時間に行われた場合であっても、被控訴人ら教職員がこれに参加することはその教職員の職務の範囲に属することは疑のないところといわなければならない。 〔賃金―割増賃金―違法な時間外労働と割増賃金〕 校長は、各学校内における最高管理権者として、「校務を掌り、所属職員を監督する」権限を有する(学校教育法第二八条第二項、第五一条、第七六条参照)から、上司として所属教職員に対して労務管理事務を行うものであるというべく、この理は時間外勤務命令に関していえば、静岡県においては、前記六のごとく、入試事務に限ってではあるが、校長に該命令を出す権限を認められていたことからも明らかといわなければならない。そして、職員会議が校長の招集、主宰にかかるものであって、その職員会議への参加は、教職員の職務であり、かつ、教職員は法律上校長に権限があると否とを問わず、事実上上司である校長の指示命令に従わざるをえない立場にあることを思えば、校長の本件指示には事実上の拘束力を認めるべく、 右指示に従って職員会議に参加した被控訴人らは、その間校長の指揮命令下にあって自由にその時間を処分しえない状態におかれたものといわざるをえないのである。これに反する控訴人の主張は採用しがたい。したがって、労働時間を規制して労働者の福祉をはかることを意図している労働基準法第四章の諸規定は、本件においては校長を名宛人としなければその実効をおさめえない訳で、これを法律的にいえば、校長は、同法第一〇条にいう「使用者」としての立場に立つものであり、その「使用者」としての校長の指示にもとづいて、正規の勤務時間外に職務としての職員会議が行われた以上、組織法上校長に右指示の権限がなかったとしても、雇用主たる控訴人は、職員会議への出席という時間外勤務に対し所定の割増賃金を支払わなければならないと解するのを相当とする。 〔賃金―割増賃金―支払い義務〕 控訴人は、「本件のような時間外勤務に対しては、時間外勤務手当を支払わない、あるいは、時間外勤務手当は請求しない、旨の事実たる慣習があった。」と主張するが、被控訴人らにも適用のある労働基準法は割増賃金の支払を強制することによって労働時間を規制しているのであり、給与条例がこれを受けているものであることにかんがみれば、時間外勤務手当を支払うかどうかは公の秩序に関する事項であって、当事者の任意処分を許さない領域に属するものというべく、したがって、従前この支払がなされたことがないことをもって控訴人主張のような慣習がある場合にあたるとしても、その効力を有せざるものというべきである。 |