ID番号 | : | 00243 |
事件名 | : | 賃金請求事件 |
いわゆる事件名 | : | ノースウエスト航空事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 組合の時限スト等に対抗して会社の行ったロックアウトに対し、従業員(組合員)らが、右ロックアウト期間中で時限スト等終結後は債務の本旨に従った労務の提供を行ったとして労務提供期間に対応する賃金の支払を求めた事例。(判決認定限度で認容) |
参照法条 | : | 民法415条,536条2項 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 債務の本旨に従った労務の提供 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / ロックアウトと賃金請求権 |
裁判年月日 | : | 1969年11月11日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ワ) 319 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集20巻6号1451頁/時報593号94頁/タイムズ241号165頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 中嶋士元也・ジュリスト470号140頁 |
判決理由 | : | 〔労働契約―労働契約上の権利義務―債務の本旨に従った労務の提供〕 原告ら組合員は、腕章を着用していた点を除けば、いずれも本件ロックアウト後各自の職場に赴き、就労の意思をもって現実に就労の申入れをなし、労務の提供を行ったものというべきである。しかして、右就労申入れの際組合員が腕章を着用し、会社の取りはずし要求に応じなかったとしても、腕章の着用が、客観的にみて会社の業務の運営に実質的、具体的な支障を及ぼし、労働者の労務給付義務と両立し得ないような特段の事情が認められない限り、腕章の着用の一事をもって右就労申入れが債務の本旨に従わない履行の提供となるものではないと解するを相当とする。 〔賃金―賃金請求権の発生―ロックアウトと賃金請求権〕 労働者が使用者に対し、労働契約の本旨に従った労務の提供をしたのにかかわらず、使用者がその受領を拒否した場合は、受領遅滞があればその期間の労務給付の履行が客観的に不能となる労働契約の特殊性に鑑み、労務給付義務の履行不能にともなう危険負担の問題として民法五三六条の規定によって反対給付である賃金支払義務の有無を決すべきものであり、債権者たる使用者は、右履行不能について帰責事由がないと認められる場合に限り、同条一項の規定により賃金債務を免責されることになると解するを相当とする。 (中 略) 使用者は、労働者の有する団体行動(争議)権と同質ないし同等の立場でロックアウトを行う権利を法律上保障されているわけではないけれども、集団的労働関係における労働条件決定の手段としてロックアウトという対抗行為を行う余地を法的に承認する以上一定の要件を具備するロックアウトが行われた事実は、前記の意味での使用者に帰責事由がないと認められる場合に該当し、使用者はそのロックアウト期間中の賃金支払義務を免責されると解すべきである。ところで、ロックアウトに右のような法的効果を賦与する要件としては、必ずしも市民法上の緊急避難またはこれに類する已むを得ない事由がある場合に限らず、労働者の争議行為によって蒙る使用者の損害(無益な賃金負担)が客観的にみてその受忍すべき限度をこえ、ロックアウト(その開始および継続を含む)に出なければならない具体的な危険性ないし緊急性が存在することをもって必要かつ十分であると解するのが相当である。 (中 略) 上記のとおり、組合が予定どおり時限ストライキの終了後ストライキ態勢を解いて、原告ら組合員の就労が確実に実現される情勢に立ち至った以上、再び反覆される虞のない筈のものであり、会社がストライキ期間中に違法行為があったことを理由に組合または組合員に対して民事上、刑事上の責任を追求することは格別として、そのことの故にストライキ終了後もロックアウトを実施(継続または開始)して労務の受領を拒否しても、上記債権者に帰責事由がない場合には当らないと認めるのを相当とする。 |