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ID番号 00256
事件名 損害賠償請求控訴事件
いわゆる事件名 東京電力塩山営業所事件
争点
事案概要  営業所内で共産党員もしくはその同調者と噂されていた女子従業員が、上司から党員であるか否か問われ、かつ党員でない旨記した文書の提出を求められたのに対し、右行為によって思想、信条の自由が侵され精神的苦痛を与えられたとして慰謝料の支払を求めた事件の控訴審。(原判決一部取消、労働者敗訴)
参照法条 労働基準法3条
日本国憲法14条,19条
民法90条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約上の権利義務 / 思想・信条の調査、調査協力義務
裁判年月日 1984年1月20日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和56年 (ネ) 1786 
裁判結果 一部取消 棄却(上告)
出典 時報1107号139頁/タイムズ521号238頁/労経速報1175号3頁/労働判例424号14頁
審級関係 上告審/03919/最高二小/昭63. 2. 5/昭和59年(オ)415号
評釈論文 下井隆史・季刊実務民事法7号216頁/手塚和彰・ジュリスト865号117頁
判決理由  以上の認定事実によれば、本件話合いにおいて、控訴人Xと被控訴人との遣取ないし応酬は、本件質問及び本件書面交付の要求を軸として互角に経過していたが、終盤に及んで被控訴人が控訴人Xを凌駕し、本件書面交付を頻りに求めてやまない同控訴人の目論見を挫折させて本件話合いを思い通りに終熄させたこと、同控訴人の本件質問に対して被控訴人は共産党員でない旨の返答をしているが、右返答は被控訴人が不用意に洩らした発言で任意に出たものであること、同控訴人の本件書面交付の要求行為(遣取ないし応酬の経過における言動を含む。以下同じ。)に対して被控訴人は終始拒否をもって対応しているが、右対応は被控訴人が同控訴人の本件書面交付の要求行為をことごとくあしらい去った応酬の顛末にほかならないことが明らかであるから、控訴人Xは本件質問及び本件書面交付の要求行為によって被控訴人に恐怖心を生ぜしめるにいたらなかったというべきであり、また被控訴人は本件話合いを通して自己の意思決定の自由を完うしたといわなければならない。