ID番号 |
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00262 |
事件名 |
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地位保全仮処分事件 |
いわゆる事件名 |
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大日本紡績事件 |
争点 |
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事案概要 |
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保母から庶務係、さらに布団場の作業応援命令を拒否したことを理由とする解雇につき、右業務命令を拒否すべき正当の事由あるものということはできないとして、地位保全仮処分申請を却下した事例。 |
参照法条 |
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労働基準法2章 |
体系項目 |
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配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 |
裁判年月日 |
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1956年7月2日 |
裁判所名 |
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東京地 |
裁判形式 |
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決定 |
事件番号 |
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昭和30年 (ヨ) 4760 |
裁判結果 |
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却下 |
出典 |
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労働民例集7巻4号621頁/時報85号22頁/労経速報215号2頁 |
審級関係 |
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評釈論文 |
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労働基準9巻1号33頁/労働時報9巻5号25頁 |
判決理由 |
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一般に企業にあっては、企業施設と労働力とが有機的に統一して構成されていて、労働者は企業の効率的運営に寄与するため労働力の提供を約諾しているのが通例であるから、使用者は、この企業を運営するため、労働力を按配して使用する権能を有するわけである。従って使用者は、労働者との間の配置転換をなさない旨等の特別の合意がない限り、労働契約の趣旨に従って、労働者に対し、配置転換又は他の職場における作業の応援命令をなし得るのであり、これが法令に違反し、又は著しく不当なものでない限り、労働者はこれに服すべき雇用契約上の義務を有する。そして前認定の事実に徴すれば、被申請人会社の申請人に対してなした前記業務命令は法令に違反するもの又は著しく不当なものと認めることはできないし、かつ被申請人会社は申請人に対し、夏布団の作成完了までの間臨時の措置として布団場に応援に赴くよう命じたのにもかかわらず、申請人は不満であると表明するのみでその他に何ら合理的な理由を明示することなく、これを拒否し、遂には作業の遂行に支障を生ぜしめたものであるから、申請人の右所為は、雇用契約上の重大な業務違反というべく、右協約にいう「已むをえない業務上の都合によるとき」に該当する。もつとも申請人が当初保母として採用されながら間もなく労務庶務係に配転され、次で布団場の作業の応援を命ぜられたのであるから、労働契約の趣旨に照し布団場の作業をなすことは申請人の予期しないところであってこれに不満を抱くことは諒察するに難くないけれども、労務庶務係への配転については特に反対を表明した疎明はないし、また作業の都合上臨時的に布団場の応援作業に従事することが著しく不当のものがないことは前記認定の通りであるから自己の意に満たなかったであろうことは首肯しえても、その故に右の業務命令を拒否すべき正当の事由あるものということはできない。 |