全 情 報

ID番号 00276
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 東洋鋼鈑事件
争点
事案概要  研究所購買係から本社総務部所轄の独身寮への配転命令を拒否したため懲戒解雇に付せられた女子従業員が、従業員としての地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の濫用
裁判年月日 1972年8月24日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ヨ) 629 
裁判結果 (控訴)
出典 労働民例集23巻4号499頁
審級関係 控訴審/00282/東京高/昭49.10.28/昭和47年(ネ)2138号
評釈論文 諏訪康雄・ジュリスト541号119頁
判決理由  以上、判示各事実を綜合すれば、申請人には産休明けには同人の原職が消滅し、配転を受ける業務上の必要性が生じ、その配転先についても妊産婦等の制約から一時的には限定されてしまう事情があったことは否定できないのであるが、被申請人は右事情を利用し、女子従業員については従前から結婚退職を通例とし、少なくとも出産後はすべて退職される方針でいたところ、申請人はこれに反し出産後も退職しようとしないので、これを敬遠する余り、産休明けに、偶々原職が消滅したのを奇貨として、就業規則上の保護に名をかりて、さして業務上の必要のないのに評価上不利益な地位である新しい現業まがいの職場を創設して独身寮の寮事務係として配転させ、結局は同人の労働意欲を喪失させることにより、退職の決意をさせようとしたものと推認できるのであり、被申請人が本件配転をなした決定的動機もここにあったものと解さざるを得ない。
 そうだとすれば、本件配転は、女子従業員が結婚、出産したことをもって、これを離職に至らしめようとする意図から発した不利益処分であり合理的配転でなく、したがって、人事権の乱用というべきで、無効と解すべきである。