ID番号 | : | 00280 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本ゼオン事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 中央研究所の研究助手(実験員)らが、本社への転勤命令を拒否したことを理由に、懲戒解雇に付せられたので、前記中央研究所(開発総合センターと改称)の従業員としての地位保全、賃金の仮払の仮処分を申請した事例。(申請一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 |
裁判年月日 | : | 1973年3月20日 |
裁判所名 | : | 横浜地川崎支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和47年 (ヨ) 121 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労経速報811号22頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 労働の場所、種類、態様は、賃金等の労働条件と同様労働契約の不可欠の条件と解すべきところ、前記当事者間に争いのないところと当裁判所が認定した各事実を総合して認められる、債権者等の就職時の状況、就職後の担当した業務内容、右業務を担当した期間、債権者の右就職当時債務者における前記中央研究所の組織上の位置等を総合すると、債権者等と債務者間において、債権者等を前記中央研究所研究助手(実験員)として、前記認定のとおりの債権者等の担当した実験内容をその職務内容とする旨の労働契約が締結されていたと認めるのが相当である。 四、1 労働条件の変更に関し特別の合意が存在しない以上、使用者がこれを変更しようとするときは、原則として労働者の承諾を得る必要があり、労働者の右承諾がない限り、使用者が一方的にこれを変更することは許されないと解するのが相当である。 2 しかして、債務者のなす転勤命令について、債権者等の承諾を必要としないとする旨の債務者と債権者等間の特別の合意の存在は、債務者側の疎明資料その他本件全疎明資料によるもこれを認めるにいたらない。 3(一)疎明資料略によれば、債務者の就業規則第一九条において「会社は業務の都合により従業員に出張、駐在、転勤、出向・・・・を命ずることがある。従業員は正当の理由なくこれを拒むことはできない。」旨規定されていて疎明資料によれば、債権者等は就職当時債務者宛、右就業規則を遵守する旨の誓約書をそれぞれ提出していることが認められるけれども、前記一、2.において認定した各事実に照らすと、右就業規則の規定および債権等提出にかかる右誓約書の存在から、ただちに債権者等が債務者と、債務者のなす転勤命令に債権者等の承諾を必要としない旨の特別の合意をしていたとは認め難い。 債権者等が債務者の本件転勤命令に応じなかったことを理由とする債務者の債権者等に対する右懲戒解雇の意思表示は、上来説示して来たところにしたがえば債権者等に帰責されるべきでない事由をもってなされた懲戒解雇であって、結局何等の理由のない懲戒解雇であることに帰着し権利の濫用として無効と解するほかはない。 |