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ID番号 00281
事件名 仮処分控訴事件
いわゆる事件名 エール・フランス事件
争点
事案概要  パリ移籍拒否のスチュワーデスらが新契約の締結を予定する解雇予告を通告されたので右意思表示の効力停止の仮処分を申請した事例。(原審 申請認容)
参照法条 労働基準法2章
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
裁判年月日 1974年8月28日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ネ) 2772 
裁判結果 認容
出典 労働民例集25巻4・5合併号354頁/時報750号21頁/東高民時報25巻8号143頁
審級関係 一審/03601/東京地/昭48.12.22/昭和48年(ヨ)2354号
評釈論文 阿久沢亀夫・法学研究〔慶応大学〕47巻12号91頁/山口浩一郎・ジュリスト603号167頁/沢藤統一郎・労働法律旬報867号29頁/沢木敬郎・昭49重判解説231頁/田村精一・ジュリスト586号163頁
判決理由  上来判示の事実関係によれば、控訴人の為した本件解雇予告の意思表示は、契約関係を完全に終了せしめる通常のそれとは異り、もし被控訴人らにおいて新契約の締結に応ずるときは、旧契約の終了と同時に直ちに新契約に移行することを前提とするものであり、しかも前認定のとおり、右両契約は、その雇用地及び配属先を異にする点以外は、その勤務内容等において本質的な意味での差異はなく、右両者間の決定的な相違点は結局するところ、被控訴人らのベースが東京かパリかという一点に帰着するものとみるのが相当である。
 してみると、これを実質的に考察するときは、本件解雇予告の意思表示は、恰もパリへの配置転換命令に対する承諾を解除条件とする解雇予告のそれに等しく、換言すれば、右命令に応じないことに因る予告解雇と同一に論ずるのを相当とするものである。
 (中 略)
 ところで、企業における労働者の配置転換については、その雇用契約において配置場所が明定されている場合には、使用者は当該労働者の同意なくしてこれを配転し得ない(逆にいえば労働者は右配転命令に応ずる法的な義務を有しない)のを本則とするものと解すべきであり、従って特段の事情があれば格別、然らざる限り、使用者が右の如き配転命令を発し、これに従わない労働者をそのゆえをもつて予告解雇に付するが如きは、通常、解雇権の濫用として無効たることを免れないものというべきである。
 これを本件についてみるに、前判示のとおり、控訴人と被控訴人らの雇用契約においては「雇用地を東京、配属先を日本支社」とすることが明定されているのであり、しかも被控訴人らの職種がスチユワーデスであっていわゆる幹部職員ではないことからみて右文言を広義弾力的に解釈することは当を得たものとはいえない。
 (中 略)
 従って控訴人は元来被控訴人らに対し、その意に反して東京以外の地への配置転換を命じ得ない筋合であるにもかかわらず、控訴人が実質的配置転換を命じ、これに従わない被控訴人らをその理由で予告解雇に付したものとみるべきことは上述のとおりであるから、控訴人の右解雇予告の意思表示を予告解雇権の濫用とする被控訴人らの主張は一応理由があるものといえる。
 以上によると、控訴人が被控訴人らに対し、東京ベースの合意に反して為した本件配転命令(形式上は旧契約終了の通告と新契約締結の申込)につき、これを適法有効ならしめる特段の事情は遂にこれを認めることができないから、右配転命令の拒否をその実質的理由とする本件解雇予告の意思表示は、予告解雇権の濫用として許されないものといわなければならない。