ID番号 | : | 00298 |
事件名 | : | 解雇の効力停止仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 福井鉄道事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | バスの運転手から他の営業所におけるタクシーの運転手への配転命令を拒否したことを理由とする労組組合員の懲戒解雇の効力を仮に停止することが求められた事例。(申請認容) |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 |
裁判年月日 | : | 1977年3月3日 |
裁判所名 | : | 福井地武生支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和51年 (ヨ) 8 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例277号6頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 右労働協約には第九条一項に「従業員の異動・転勤・出向・休職・職分の任免については会社は本人の意向を尊重し、実施に先立ち七日前に本人ならびに組合に通知する。」二項に「本人又は組合により異議の申立てがあったときは実施を保留し、会社は解決まで組合と協議する。」との規定があることが一応認められる。右規定は、債務者会社における人事異動について、その従業員が一方的に不利益扱いを受けないためのもの換言すれば使用者である債務者会社の一方的な意思によって労働契約の要素をなす労務の提供場所・種類・態様を直に変更させることはできない旨を定めたものであると解すべきであり、本件配転命令による配転は、右認定事実によると、かなり不利益なものであり、労働契約の要素を変更するものというべきであるから、本件配転命令による配転は右規定に定めるところの人事異動に該当するというべきである。そして債権者らは、右認定のとおり、本件配転命令に対し異議の申立をしたのであるから、本件配転命令は右規定に基づく異議の申立をされたことにより、その実施を保留されるべきものとなったというべきである。因に右規定の効力は、仮に債務者会社主張のとおり、A班への勤務替について昭和四七年一二月債務者会社の組合自対部とその嶺南総括営業所長との協議において、また翌四八年一月の敦賀営業所職場集会において、敦賀営業所内の運転手全員を交替対象者とするとの申合せがなされたとしても、これらによりなんらの影響を受けるものでないことは多言を要しないことである。 2 そうすると債権者両名の右所為はいずれも就業規則第四条及び第五条に違反するものとは言えないし、ひいては懲戒規定第五条一〇号、一号にも該当するとは言えない。けだし、債権者両名の右所為が右各規則に違反し、右規定に該当するものとされるためには本件配転命令が直ちに有効に実施されるべきものであることを前提としなければならないのに、前記のとおり本件配転命令はその実施を保留されるべきものであり、直ちに実施されるべきものではないからである。 四 したがって債務者会社は懲戒解雇事由に該らない債権者らの所為を捉え、これが懲戒解雇事由に該たるとして、すなわち懲戒解雇事由がないのにこれがあるとして、債権者両名に対し本件懲戒解雇をしたことになるから、本件懲戒解雇はその懲戒解雇事由を欠き無効なものであるというべきである。したがって債権者両名は債務者会社との労働契約上の権利を有する地位にあるものというべきである。 |