ID番号 | : | 00307 |
事件名 | : | 地位保全等仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 川崎重工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 配転命令に従わないことを理由に使用者がなした解雇につき、右命令は勤務場所を限定した合意に反し無効であり、又権利の濫用に当たるとして、従業員としての地位の保全を求めた仮処分事件。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法1条3項 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠 |
裁判年月日 | : | 1980年6月27日 |
裁判所名 | : | 神戸地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ヨ) 683 |
裁判結果 | : | 認容(控訴) |
出典 | : | 労経速報1054号7頁/労働判例346号24頁 |
審級関係 | : | 控訴審/00314/大阪高/昭58. 4.26/昭和55年(ネ)1266号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣―配転命令の根拠〕 一般に勤務場所の変更は、労働者の生活関係に深刻な影響を与える場合があるから、使用者が勤務場所の一般的指定権限を有する場合においても、それが絶対的なものと解し得ないのは当然であって、その行使についての業務上の必要性の程度、対象労働者選定の合理性、これにより対象労働者の受ける不利益の程度、その他の事情を考慮して、その行使が客観的にみて相当性を欠く場合には、右行使(配転命令)は権利の濫用として、その効力を有しないものと解すべきである。 (中 略) これらの事情から判断すると、前記のように人手不足の状態になるおそれのあった右電算企画課に所属する債権者を、本件配転の対象としなければならない業務上の必要性は疑問があり、仮にこれがあるとみるべきであるとしても、その程度は小さいものといわざるを得ないし、その人選の合理性も疑問があるのであり、また、債権者は、本件配転により結婚当初から単身赴任をせざるを得ない事態となることが予想され、その期間の定めもないため、これに伴い多大の精神的経済的不利益を受けるおそれがあるものというべきであるうえ、先に(理由二2(二)項)述べたように、債権者については、全国的規模での転勤を原則として予想せざるを得ない幹部職員候補者に比して、配転の必要性や合理性の存在についての判断はより厳格になされるべきであり、また、それらの者に比してその個人的利益もより重視されて然るべき立場にあったことも考慮すると、債権者の同意のないままなされた本件配転は客観的にみて相当性を欠くものというべきであり、結局、本件配転命令は、債務者の労務指揮権の濫用としてその法的効果を生じないものといわなければならない。 〔配転・出向・転籍・派遣―配転命令の根拠〕 債務者の就業規則第一四条には「会社は業務上の都合により従業員に転勤を命ずることがある」との記載があること並びに債務者と債権者の所属する労働組合との間に締結された労働協約第三七条一項には「会社は業務上の都合により、組合員に対して転勤、職種変更、配置転換、役職任免ならびに出向を命ずることができる」との記載があることがそれぞれ疎明される。ところで、右のような包括的な配転権限を使用者に承認する趣旨とも解しうる就業規則及び労働協約の規定の存在や右就業規則の規定の適用を承認する旨を労働契約書に明記している点は、本件労働契約における勤務場所についての合意内容を解釈するに際しては、その一資料として考慮すべきであるが、ただ、債務者は、前記のように全国的に多数の事業場を有しており、その従業員も多数であって入社時までの経歴、入社後の担当職務、その生活環境も多様なことが推察されるから、「従業員」あるいは「組合員」につき右のような個人的事情を考慮せず一律に配転権限を承認する趣旨とも解しうる前記規定を、当該労働契約の内容を解釈するに当っての決定的要素と速断し、これらにより使用者の包括的な配転権限を合意したものとみるのは相当ではない。むしろ、前記のような個別的事情を検討して当事者間の契約内容を合理的に解釈すべきである。 |