ID番号 | : | 00310 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日本シェーリング事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 使用者がなした配転につき、不当労働行為であって無効であるとして、右配転の効力停止等を求めた仮処分事件。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民事訴訟法(平成8年改正前)758条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 配転・出向・転籍・派遣と争訟 |
裁判年月日 | : | 1981年9月28日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和53年 (ヨ) 3439 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例375号59頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 労働者が使用者に対して配転命令の無効を理由に配転命令の効力停止を求める趣旨の仮処分は、(1)配転命令前の旧勤務場所ないし旧職種の従業員として労務を提供すべき労働契約上の地位を有することを仮に定める仮処分か、あるいは、(2)配転命令後の新勤務場所ないし新職種の従業員として労務を提供すべき義務のないことを仮に定める仮処分の形を変えた表現であると解すべきである。したがって、配転命令の効力停止を求める仮処分申請がなされた場合において、旧勤務場所ないし旧職種が組織上廃止されて現存しないときは、旧勤務場所ないし旧職種の従業員として労務を提供すべき労働契約上の地位は不確実であり、これを確定するに由なしといわなければならないから、もはや右(1)の趣旨の仮処分としては許されないが、反面、労働契約上の地位に不安定な要素を残すとはいえ、右(2)の趣旨の仮処分としては許容され得るものというべきである(ちなみに、この場合裁判所が右仮処分申請を認容するときは、右の理由を明らかにするため主文において右(2)の趣旨の仮処分を命ずるのが相当であると考える)。 会社が当時の客観的状況に照らしその企業判断に基づいて図書室業務の移管、図書室の廃止に踏み切ったこと自体は、企業経営上やむを得なかったものと思われる。しかし、右図書室の廃止に伴って図書室勤務の申請人宏を配転するにあたり、同申請人を総務部購買課倉庫係に配置する合理的理由が全く存しなかったにもかかわらず、前記2(三)認定のような同申請人の職歴、能力、意思等を全く度外視して漫然と同申請人を「隔離部屋」の悪評さえある右倉庫係に配転したことは、会社にしてみれば窮余の一策であったかも知れないが、同申請人に図書室勤務を命じた本件配転命令の当否とも無関連ではなく、客観的にみると業務上の必要性に基づくものとはいいがたい。 |