全 情 報

ID番号 00316
事件名 従業員地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 鴨島中央病院事件
争点
事案概要  一週間置きに洗濯等雑役職務と午前七時の早出勤務を交互になす旨の配転命令を受けた看護助手と懲戒解雇処分に付された組合委員長たる看護婦が、右命令および処分は不当労働行為にあたり無効である等として、それぞれ配転命令効力停止等、地位保全等求めた仮処分申請事件。(申請認容)
参照法条 労働基準法2章,89条1項9号
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令の根拠
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 業務命令拒否・違反
裁判年月日 1984年2月9日
裁判所名 徳島地
裁判形式 決定
事件番号 昭和58年 (ヨ) 135 
昭和58年 (ヨ) 143 
裁判結果 認容
出典 労働判例431号117頁/労経速報1197号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔配転・出向・転籍・派遣―配転命令の根拠〕
 被申請人は、本件配転処分は、本来看護助手の労働契約上の職務に含まれている洗濯、掃除等の業務及び早出勤務を命ずるものであり、労働契約の履行過程における使用者の具体的指示にすぎず労働契約の内容を変更する法律行為ではないと主張する。
 しかしながら、右疎明事実及び当事者間に争いのない事実によれば、申請人X1及びX2は看護助手として看護補助的業務、患者指導業務、患者介護業務等の職務に従事することを労働条件の限定的な内容として雇用され、就業規則に定められた就業時間内(午前八時三〇分から午後五時まで)において右職務に従事してきたところ、本件配転処分は、右申請人両名を従来A、Bのみが担当していた洗濯清掃等の雑役業務に配置転換し、右四名が一週間交替で早出出勤することを命ずるものであると認められる。そうすると、右処分は、看護助手として看護行為に準ずる業務に従事することを労働条件の限定的な内容として雇用された労働者を、高齢者でもなしうる比較的単純な肉体的雑役労務に配置転換し、かつ勤務時間上も就業規則に定めのない不利益を及ぼすものであるから、労働契約の重要な内容の一部を不利益に変更する法律行為であり、当該労働者の同意又は右配置転換等を合理的なものと首肯しうるに足りる業務上の正当な事由が存しなければ、法的に無効なものと解するべきである。しかして、右申請人が本件配転処分に同意していないことは弁論の全趣旨に照らして明らかであり、処分を首肯しうるに足りる業務上の正当な事由は疎明がない。
 したがって、本件配転処分は、右申請人両名のその余の主張につき判断するまでもなく無効なものである。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―業務命令拒否・違反〕
 被申請人は、本件解雇の理由として本件病院の就業規則の前記各条項に該当する事実があった旨主張する。しかしながら、本件全疎明資料によってもいまだ右事実が懲戒解雇という重大な不利益処分を理由づけるに足りるほど疎明されているとは言い難く、他に右解雇を基礎付ける正当な事由は疎明がない。したがって、申請人X3は、依然として本件病院の従業員としての地位を有するものというべきである。