全 情 報

ID番号 00317
事件名 雇用契約関係存在確認等請求控訴事件
いわゆる事件名 フォード自動車事件
争点
事案概要  外資系会社の管理職の一つである人事本部長としての地位を特定した雇用契約の締結により中途採用された従業員が、勤務成績の不良を理由に解雇されたのに対し、右事実はなく解雇は無効である等として雇用契約関係の存在確認を求めた事件の控訴審。(控訴棄却、労働者敗訴、原判決引用)
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 配転命令権の限界
裁判年月日 1984年3月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和57年 (ネ) 615 
裁判結果 一部変更
出典 労働民例集35巻2号140頁/時報1119号148頁/労経速報1197号5頁/労働判例437号41頁
審級関係 一審/00835/東京地/昭57. 2.25/昭和54年(ワ)2593号
評釈論文 香川孝三・季刊実務民事法8号216頁
判決理由  《証拠略》によれば、被控訴人の就業規則一〇条に「当会社はその判断で従業員の配置転換、又は転勤を命じることができる。従業員は、正当な理由がない限り、転勤又は配置転換を拒否することはできない。」と規定されていることは明らかであり、また控訴人が本来人事関係に属しない業務に当ったことのあることは原判決四七枚目裏三行目から同末行〈同三段九行目~二○行目〉までに説示(本判決で附加した分も含む。)のとおりである。しかしながら、先に判示のとおり控訴人・被控訴人間の本件雇用契約は、控訴人の学歴・職歴に着目して締結された。人事本部長という地位を特定した契約であって、控訴人としては提供される職位が人事本部長でなく一般の人事課員であったならば入社する意思はなく、被控訴人としても控訴人を人事本部長以外の地位・職務では採用する意思がなかったというのであり、また、《証拠略》によれば、前記説示にかかる業務は、被控訴人の組織部分の間隙に介在する分野のものであって、従前から、各部門において適宜分掌していたことが認められ、これによると、右業務は人事本部長の職務に付随するものにすぎないから、控訴人が被控訴人から右業務の処理を命ぜられたことがあったからといって、控訴人の職務上の地位にいささかも変動をもたらすものではなく、したがって、被控訴人には控訴人を人事本部長として不適格と判断した場合に、あらためて右規則一〇条に則り異なる職位・職種への適格性を判定し、当該部署への配置転換等を命ずべき義務を負うものではないと解するのが相当である。