ID番号 | : | 00323 |
事件名 | : | 仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 洞海産業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 就業規則の変更によって出向制度を明文化した会社により関連会社への出向を命じられ一応これに応じた従業員が、右出向命令は不当労働行為にあたり無効であるとして、出向元会社勤務の従業員としての地位保全を求めた仮処分申請事件。(申請認容) |
参照法条 | : | 民法625条1項 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の根拠 就業規則(民事) / 就業規則の一方的不利益変更 / 配転・出向・転籍規定 |
裁判年月日 | : | 1968年7月5日 |
裁判所名 | : | 福岡地小倉支 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ヨ) 320 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | タイムズ226号134頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔配転・出向・転籍・派遣―出向命令権の根拠〕 従業員は、特約、その他正当な根拠がない限り、労働契約上、使用者の指揮下において使用者に対し労務を提供する義務を負担するにとどまり、第三者の指揮下において第三者に対し労務を提供する義務を負担するものではないと解すべきところ、本件疎明資料によると、本件出向命令は、被申請会社と申請人との間の雇傭関係こそ申請人休職のまま継続するが、申請人に対する服務上、人事上(解雇を含む)その他の権限および給与支給その他の義務が被申請会社からA会社に引き継がれて、被申請会社において従前有していた申請人に対する指揮権、使用権を失うことを内容するものであることが認められ、被申請会社のA会社に対する影響力、支配力もただちに右内容を左右するものとは認められないから、本件出向命令は結局、第三者たるA会社の指揮下においてA会社に労務を提供すべきことを命じるものであって被申請会社と申請人との間の労働契約上根拠を有するものではない。そして右労働契約を結ぶにあたり、特約その他特段の事由を認めるにたる疎明資料はないから、労働契約上申請人が本件出向命令に応ずべき義務を負担するものとはいえない。 〔就業規則―就業規則の一方的不利益変更―配転・出向・転籍規定〕 被申請会社は、前記就業規則二七条、二八条の一部変更により、出向制度が被申請会社と申請人との間の労働契約の内容を成すに至ったと主張する。 ところで、就業規則中従業員にとって重要な労働条件の変更も、それ自体としては有効であるが、右変更はただちに既存の労働契約の内容を変更するものではなく、当該従業員自身が右就業規則変更に同意することによって、既存の労働契約の内容となるものと解すべきところ、申請人が既存の労働契約上本件出向に応ずべき義務を負担していなかったことは前記のとおりであるから、就業規則二七条、二八条の一部変更により右義務が明文化されても、このような労働条件の重要な変更は申請人の同意がない限り、申請人に対し効力がないものというべきである。 (本件疎明資料によれば、申請人は本件申請後昭和四三年六月一四日からA会社で就労していることが認められるが、申請人が右労働条件の変更に同意していないことは明らかであるから、右変更は右申請人に対し効力がない)よって、この点に関する被申請会社の主張も理由がない。 |