ID番号 | : | 00326 |
事件名 | : | 労働契約関係存在確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日東タイヤ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 系列会社への出向命令を拒否して懲戒解雇された労働者がその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 民法625条 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の根拠 |
裁判年月日 | : | 1972年4月26日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和44年 (ネ) 1590 |
裁判結果 | : | 取消(上告) |
出典 | : | 高裁民集25巻3号203頁/時報670号94頁/東高民時報23巻4号62頁/タイムズ278号93頁 |
審級関係 | : | 一審/横浜地/昭44. 6.10/昭和42年(ワ)447号 |
評釈論文 | : | 山本吉人・昭47重判解説165頁/萩沢清彦・判例タイムズ285号89頁 |
判決理由 | : | いわゆる移籍出向と称せられるものを除いて出向は、なんらかの関連性ある、多くは資本と業務の面で緊密な関係をもつ会社間における人事移動であって、出向元会社の従業員である身分を保有しながら、すなわち休職という形のまま、出向先会社で勤務する雇傭状態であって、指揮命令権の帰属者を変更することである。これは本来重要な、しかも多くの場合不利益な労働条件の変更であり、労働協約の内容として定められていない場合は、労働者個人との合意のもとに行われるべきものである。つまり、一定の労働条件の枠の中においてのみ労務を提供するにとどまる労働契約の中では、出向について特別の約定を定めていない限り(すなわち、労働者の同意のない限り)、使用者は労働者に対して出向を当然に命令することはできないものというべきである(なお、民法六二五条、労働基準法一条、二条一項、一五条一項参照)。仮に就業規則に契約の効力の変更を認める見解によるとしても、就業規則に明白に出向義務を規定する必要があるといわなければならない。 前記認定のように、被控訴人会社においてその従業員が、出向命令に服しており、《証拠略》によって認められるように控訴人所属の労働組合も出向命令権自体を否定していないとしても、これだけで出向会社における出向期間、給与体系その他の労働条件について確たる定めがあると認められないことも前記認定のとおりであるから到底確立した慣行が存し、控訴人も黙示的にこれに同意していたものとは認められない。 (中 略) 従って、本件出向を命じた義務命令は労働契約を超えた事実上の命令であって、出向者の承諾のない限り効力をもたないものというべきであり、右命令を拒んだことに由来する本件懲戒解雇は、その余の点の判断をまつまでもなく違法であって、無効といわなければならない。 |