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ID番号 00338
事件名 賃金支払請求控訴事件
いわゆる事件名 日本製麻事件
争点
事案概要  出向先会社における賃金の未払につき、雇用契約関係は出向元会社との間に存在するとして、右賃金の支払を求めた事例。
参照法条 労働基準法11条
民法624条,625条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 出向中の労働関係
裁判年月日 1980年3月28日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和54年 (ネ) 1393 
裁判結果 棄却(確定)
出典 時報967号121頁/労経速報1059号17頁
審級関係 一審/神戸地/昭54. 7.17/昭和53年(ワ)793号
評釈論文
判決理由  控訴会社とその労働組合との間で締結された労働協約に基づく出向規定上、海外出向者は、その出向期間中休職扱とする旨定められていること、被控訴人が昭和五〇年五月に控訴会社の命を受けて訴外会社に出向する際、当時非組合員ではあったけれども、右出向については出向規定を適用する旨会社側と合意ができていたことがそれぞれ認められるので、出向期間中も控訴会社と被控訴人との間の雇用契約関係が存続していたことは明らかであるけれども、休職扱とされる出向期間中の給料・賞与等の支払義務を誰が負担するかは、それとは別個の問題であって、雇用契約関係が存続しているから当然に控訴会社がこれを負担するものということはできず、その負担者いかんは、出向に際しての会社と出向者との間の明示的もしくは黙示的合意の内容によって定まるものといわなければならない。
 (中 略)
 本件出向期間中の被控訴人に対する給料・賞与の支払義務は、特段の事情のない限り、控訴会社とは法律上別個の法人である訴外会社がこれを負担するとの合意があったものといわざるをえないけれども、事実上の支店である訴外会社の支払不能などの事情によって同会社がこれを履行することができなくなったときには、出向社員の待遇・労働条件の維持を保障する趣旨から、その分については出向元である控訴会社が被控訴人との間に存続している前記雇用契約に基づいてこれを支払うとの暗黙の合意が出向の際に控訴会社と被控訴人との間で成立していたものと認めるのが相当である。そうすると、訴外会社が支払不能の状態に陥って被控訴人に対する給料・賞与の支払義務を履行することができなくなったことは右認定のとおりであるから、控訴会社は被控訴人に対し、前記未払給料及び賞与の支払をなすべき義務を負うものといわなければならない。