ID番号 | : | 00340 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 日立精機事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 製造会社技術者を輸出会社に転属させることにつき、右転属には同意が欠け無効であるとして、従前の使用者における従業員としての地位の確認を求めた仮処分事件。 |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法625条1項 |
体系項目 | : | 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の根拠 |
裁判年月日 | : | 1981年5月25日 |
裁判所名 | : | 千葉地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和50年 (ヨ) 213 |
裁判結果 | : | 却下(控訴) |
出典 | : | 時報1015号131頁/労経速報1095号3頁/労働判例372号49頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 高木紘一・昭和56年度重要判例解説〔ジュリスト768号〕217頁/山口浩一郎・労働経済判例速報1118号15頁/秋田成就・季刊労働法123号92頁/土田道夫・ジュリスト779号125頁 |
判決理由 | : | 雇用契約は労働者が使用者の指揮命令下に労務を提供し、その対価として使用者が労務者に賃金を支払うことを本質とし、使用者と労務者との密接な関係を前提とするものであるから、現に在籍する会社との雇用契約を終了させて新たに他の会社であるA会社との間に雇用契約を締結することを意味する本件転属の場合には転属者である債権者の同意を要すると解さざるを得ない。 債務者は会社とA会社が実質的に同一であって、両社間の転属については社内配転と同様の運用がなされてきたとして本件転属に債権者の同意が不要である旨主張するが、前認定から明らかなとおり、A会社は会社とは別個の法人であって、会社と密接な関係にあるものの、その従業員に対し独自の指揮命令権を有しているから、本件転属によって雇用契約上の使用者に変更をきたすことが明らかであるし、債務者のいうところの労働条件等の同一性も会社とA会社の法人格が異なる本件の場合には将来の保証に欠け、転属により労働者の権利義務に変動が生じないとする資料とはなり得ないから、債務者の主張を肯認することはできない。 債権者は転属に必要とされる転属者の同意は転属の際の個別具体的な同意に限られる旨主張するが、そのように限定しなければならない理由はなく、転属先の労働条件等から転属が著しく不利益であったり、同意の後の不利益な事情変更により当初の同意を根拠に転属を命ずることが不当と認められるなど特段の事情のない限り、入社の際の包括的同意を根拠に転属を命じうると解するのが相当である。 |