全 情 報

ID番号 00344
事件名 出向命令効力停止仮処分申請事件
いわゆる事件名 佐世保重工業事件
争点
事案概要  病気の母がいることを理由とする出向拒否に対する解雇につき、その出向拒否には正当な事由があるとして、出向命令効力停止の仮処分申請を認容した事例。
参照法条 労働基準法2章
民法1条3項,625条
体系項目 配転・出向・転籍・派遣 / 出向命令権の限界
裁判年月日 1984年7月16日
裁判所名 長崎地佐世保支
裁判形式 判決
事件番号 昭和58年 (ヨ) 58 
裁判結果 一部認容(控訴)
出典 タイムズ538号220頁/労働判例438号34頁/労経速報1199号18頁
審級関係
評釈論文
判決理由  債務者が本件出向に係る出向の対象者として不適当と考えた基準は、病気中で当面回復の目途が立たない人、家族が本人と同居すべきところ動かせない状況にある人、出向先で危険な状態が予想される人、妻不在で子供がいて佐世保では面倒を見てくれても出向先でその期待が出来ない状況にある人などであつたこと、今回の出向計画の実施に際しても右基準に照らし心臓病の妻を持つ者がこれに該当するとされた事例があつたこと、が一応認められる。
 右認定事実によると、次のように判断すべきである。債権者は四二才ではあるが未だ独身であり、一人で病気の母の世話をしているのであるが、前認定の残業拒否は母の世話のため必要止むをえないものであつたし、年の前半に使い切った有給休暇の大半もこの母の世話のために使つたものであり、勤務態度不良の評価の理由は専ら右の残業拒否及び有給休暇その他の休暇の使い方から来るものであつて、それ以外の勤務中の態度不良については何らの主張も立証もない。さらに、母の病状は他地への転居を許さず、病状が一進一退で治療効果なくそのため入院を許される状況にはなく、頼りうる唯一の身内である姉の家庭も福岡県遠賀郡芦屋町に在住し家庭内の事情から母を預けることができる状態にない。このような債権者の事情は債務者自らが立てた基準によると出向不適当の者に該当するというべきである。
 それゆえ、債権者が病気の母の転居困難を理由に本件出向を拒否したことに正当な事由がなかつたものとは断定できない。