ID番号 | : | 00353 |
事件名 | : | 休職処分無効確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | アール・ケー・ビー毎日放送事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 企業外における組合活動(訴外会社のメーデー参加妨害に対する抗議活動)に関連して住居侵入、傷害の罪により起訴された(無罪判決確定)組合員が、前記事実を理由として就業規則に基づき起訴休職処分に付せられたので、当該処分の無効確認および休職期間中の賃金を請求した事例。(請求認容) |
参照法条 | : | 労働基準法89条1項9号 |
体系項目 | : | 休職 / 起訴休職 / 休職制度の合理性 |
裁判年月日 | : | 1975年2月4日 |
裁判所名 | : | 福岡地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和46年 (ワ) 361 |
裁判結果 | : | 認容 |
出典 | : | 労働判例219号55頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 下井隆史・労働判例220号4頁 |
判決理由 | : | 一般に、刑事事件で起訴されても有罪判決までは無罪の推定をうける。しかし、刑事々件の有罪率が著しく高いことは、我国では公知の事実であり、その結果被告人は相当高度の客観性をもって犯罪の嫌疑をうけていると社会的に評価されることになる。 そのため、企業が刑事被告人たる従業員を引続き就労させる場合、当該従業員の地位、職務内容、起訴された事実の具体的内容、当該企業の性格によっては、企業の信用を失墜し、あるいは職場規律ないし秩序の維持に支障を生ずることがある。 また、刑事被告人は勾留されることがあり、勾留されていないとしても公判期日に裁判所に出頭する義務がある(刑訴法二八六条)から、確実な労務提供ができない状態も生じ得る。その結果、企業としては労働力の適正配置に障害を生ずることがある。このことは有給休暇を使用したとしても、時季変更権に制約をうけるから完全に排除することはできないことがある。 このようなとき、企業としては、特に犯行が否認されているような場合、その犯罪の存否が未確定である故に、直ちに解雇することはできないとしても暫定的に就労を禁止する必要がある場合がある。 以上が起訴休職の合理性の一般的根拠と考えられ、本件についても妥当する。 但し、起訴休職は、被処分者に種々の不利益を与える。本件についていえば前記(一)に述べた通りである。よって前記起訴休職に関する諸規定の解釈として、従業員が起訴された場合会社は、前記の制度の趣旨、目的は勿論、被処分者の不利益も十分に考慮した上、その合理性の存する範囲内で必要な処分を行うべく、これを逸脱した場合は就業規則の解釈適用を誤り、裁量権を濫用したものという非難を免れない。 (中 略) そうして全立証にてらしても、本件休職処分が為された当時、原告らがあらためて身柄を拘束されたり、あるいは前記認定よりも更に高密度で公判が開廷されたりして前記の業務のための労務提供に支障を生じるおそれがあったことを認めるに足る証拠は見出すことができず、その公判が右認定の程度であるならば、出頭のための欠勤は有給休暇をもって処理することもできたと推認される。前記の職場構成、業務内容からみて会社が、公判期日に有給休暇を申請された場合しばしば時季変更権を行使しなければならないような事態が予測されたとは考えられない。また公判期日は通常相当前に指定され、召喚された被告人が正当な事由により出頭することができないときは、所定の手続をとって期日の変更を求めることもできるのである(刑訴法二七六条)。してみると、本件休職処分当時、原告らに起訴されたことによる労務提供の障害はなかったし、将来これが生ずるおそれもなかったと認めるのが相当である。 (中 略) 以上の諸事実関係を綜合すれば、起訴された原告らをそのまま就労させた場合、職場規律ないし秩序の維持に支障を生じ、あるいは企業の信用を失墜し、ひいては経営上の支障を生ずると憂慮されるような事情はなかったものと認めるのが相当である。 (中 略) してみると、本件休職処分は、それを有効とする合理性の根拠を欠き、就業規則の解釈適用を誤り、更に前記の如き被処分者の蒙るべき不利益も考慮すれば裁量権を濫用してなされた違法があると判断するのが相当である。 よって爾余の点を判断するまでもなく、本件休職処分は無効というべきである。 |