全 情 報

ID番号 00365
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 愛三工業事件
争点
事案概要  期間一ケ月の短期の労働契約を六回更新し通算して六カ月以上にわたって同一業務に従事してきた労働者に対する更新拒絶に対して、右解雇の意思表示の効力の停止(予備的に従業員たる地位の確認)を求めて提起された仮処分事件。(申請却下)
参照法条 労働基準法21条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1961年2月22日
裁判所名 名古屋地
裁判形式 決定
事件番号 昭和35年 (ヨ) 884 
裁判結果
出典 労働民例集12巻1号92頁
審級関係
評釈論文 宮本安美・法学研究〔慶応大学〕35巻6号107頁/古西信夫・労働経済旬報487号17頁
判決理由  被申請会社における臨時工は一ケ月の期間の定めをもって雇傭せられるものであるが、その多数の者は一ケ月の期間満了により直ちには申請会社との雇傭関係が終了となるものではなくして、特別の事情のない限り相当多数回に亘り同一の契約条件期間をもって契約の更新されている事実、申請人においても臨時工として前後六回にわたりその都度同一内容の条件で契約を締結して来た事実に鑑みるときは申請人と被申請会社との雇傭関係は一ケ月の期間の満了によって何らの意思表示も要せず当然に終了するものとは解し難く、被申請人との間に同一条件を以て更に契約を更新できる旨の具体的期待権が存在するものと考えられ、右期待権は予め期間満了に先き立ち被申請人から契約の更新を拒絶する旨の意思表示が為されない限りはその後も引続き同一条件を以て継続されてゆく性質のものであると解される。
 しかしながら、右の如く更新された契約はあく迄従前の契約と同一内容であり本件の場合においては一ケ月の確定期間を有するもので、期間の定めのないものに変化するわけではない。之は被申請会社における臨時工の性質がその業種からみて一時的な労働力の不足を補うために雇用される性格を有し一定期間通常の勤務状態を継続すれば将来詮考を経て本工に採用する旨の明示又は黙示の意思が契約全般から当然に看取できるような性格のものではなく、従って通常見習工或いは試用員と呼ばれる場合とは凡そ類を異にしていると認められるからである。その他期間の定めのある雇傭が反覆して更新された場合に之が期間の定めのない契約に法的に変化するためには、業務の具体的事情、必要によつて更新されるのではなく使用者側が解雇予告の手続を免れるためとか、或いは解雇の際の正当な解雇事由の主張立証の煩をのがれるため形式的に短期間の契約の更新を反覆しているような場合で、法の保護せんとする労働者の権利を侵害するような「脱法の意図」の存在が必要であると解されるが、本件においては被申請会社にそのような脱法の意図のあった旨の主張も疎明もないので、結局被申請人の申請人に対し八月一九日に為した労働関係を終了させる旨の意思表示は之を解雇の意思表示と見るべきではなく、単に従前為されて来た臨時工契約の更新を拒絶する旨の意思表示と見るべきであるから申請人の本位的請求は理由がない。