全 情 報

ID番号 00372
事件名 雇用関係確認等請求控訴並附帯控訴事件
いわゆる事件名 八欧電機事件
争点
事案概要  期間雇用を反復更新されていた臨時従業員が、無断欠勤を理由に契約を即時解除されたのに対し、右契約は実質的に期間の定めなき雇用契約であり、右即時解除は合理的理由のない解雇に当るとして、その無効確認を求めた事件の控訴審。(控訴棄却、労働者敗訴)
参照法条 労働基準法20条,21条
民法626条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1968年3月1日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和39年 (ネ) 1628 
昭和40年 (ネ) 573 
裁判結果
出典 高裁民集21巻3号215頁/東高民時報19巻3号53頁/タイムズ223号183頁
審級関係
評釈論文
判決理由  控訴会社において臨時従業員制度に藉口して何等合理的理由なく形式上短期間を定めた労働契約を締結し、この契約を反覆することによって労働者保護の目的たる労働法規の適用を免れようとする意図が存する場合は、控訴人主張の公序良俗に反し無効とするとの法的根拠を生ずる余地があるが、被控訴会社において臨時工の有期労働契約の脱法性を認むるに足る証拠のない本件にあっては、期間の定めある労働契約が反覆更新されることにより期間の定めなき労働契約に転換する理由を見出し難い。また控訴人が被控訴会社と雇傭契約の更新を重ねることにより当然に両者の間に契約を更新する旨の暗黙の合意が成立したものと断定することは困難であり、その他合意の成立を肯認できる資料はない。
 そうだとすれば期間の定めある労働契約は期間の満了により終了するものと謂うべきところ、期間の定めある労働契約において雇傭期間が反覆更新され被用者において期間満了後も使用者が雇傭を継続すべきものと期待することに合理性が認められる場合には、使用者が更新を拒絶することは実質上解雇と同視すべきであるからこのような場合には労働基準法第二十条の規定を類推適用して解雇の予告をするのが相当と解すべきである。
 これを本件についてみるに、控訴人は昭和三十四年十一月被控訴会社に期間を二箇月とする臨時従業員として採用され、その後二箇月、更に四箇月と期間を定めて契約の更新を重ねたことは判示冒頭に示したとおりであり、原審における控訴人の供述によれば、期間満了後も雇傭関係を継続すべきことを期待し正規の従業員に切替えられることを念願していたことを認められるから、控訴人が右期間満了後も更に雇傭されるものと期待することに合理性がある場合に該当するものと謂うことができる。
 ところで被控訴人は期間満了による雇傭関係の終了をも主張するものなるところ、さきに被控訴会社のした解除の意思表示は弁論の全趣旨により契約更新拒絶の意思表示を含むと解するを相当とすべく、右意思表示が有効であるためには少くとも三十日の予告期間の経過(予告手当の支給がないことは明白であるから)を要すべきである。