全 情 報

ID番号 00378
事件名 雇用契約関係存在確認請求事件
いわゆる事件名 北九州市立門司病院事件
争点
事案概要  地方公営企業たる病院に助産および看護業務に従事するため雇用された嘱託員が、嘱託期間の一年ないし六ケ月を反復更新されていたが、病院の財政再建を理由に更新拒絶されたため、右拒否は正当な理由がないか、不当労働行為にあたり無効である等として地位確認等求めた事例。(請求認容)
参照法条 民法629条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1971年10月7日
裁判所名 福岡地小倉支
裁判形式 判決
事件番号 昭和44年 (ワ) 206 
裁判結果
出典 労経速報840号24頁
審級関係
評釈論文
判決理由  前記の事実関係のもとに、原告が半年ないし一年間の嘱託期間を更新するという方法で約七年間継続して雇用され正規職員と同様の勤務体制に組み込まれて勤務してきた実質を考慮すれば、かりに当初は正規職員が補充されるまでという暫定的要素があったとしても、原、被告間の雇用契約は漸次期間を定めた嘱託員という性格を喪失し、本件更新拒否の意思表示当時にはすでに存続期間の定めのない雇用契約に転移したものと解するのが相当であり、被告の原告に対する右更新拒否の意思表示は法律上免職の意思表示とみるべきである。すなわち、原、被告間の雇用契約は嘱託期間の満了日たる昭和四三年三月三一日でもって当然終了するものではなく、被告の右更新拒否の意思表示が法律上有効とされる場合にはじめて終了するというべきである。
 (中 略)
 右のとおり被告の原告に対する本件更新拒否の意思表示は法律上免職の意思表示とみるべきであって、原告を免職させるには地公法二八条一項各号、四項、二九条一項各号またはこれらに準ずる事由が必要というべきところ、被告はこの点に関して病院財政再建計画によるものと原告の職務上の不適格性をあげるので、以下その点について判断する。
 (中 略)
 右のとおり、被告の主張する免職事由はいずれも理由がないので、被告の原告に対する本件免職の意思表示は権利の濫用として無効というべく、原告は、被告に対して雇用契約上の地位を有するので、これを争う被告にその確認を求める本訴は理由がある。