ID番号 | : | 00382 |
事件名 | : | 労働契約関係存在確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 東京芝浦電気事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 期間二ケ月の臨時従業員の雇用契約が五年余にわたり反覆更新された後、正規従業員への登用選考に不適格の判定を受けたとして七ケ月の期間付雇用契約の期間満了により労働契約が終了したとされた労働者がその効力を争った事例。 |
参照法条 | : | 民法93条,627条 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 労働契約(民事) / 試用期間 / 本採用拒否・解雇 |
裁判年月日 | : | 1973年9月27日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和45年 (ネ) 2412 |
裁判結果 | : | 棄却(確定) |
出典 | : | 時報723号94頁 |
審級関係 | : | 一審/横浜地川崎支/昭45. 9.22/昭和42年(ワ)320号 |
評釈論文 | : | 金子征史・労働判例187号18頁 |
判決理由 | : | 右掲記の1ないし3認定事実をあわせれば、被控訴人は、前記工場における基幹臨時工として、工場生産を支える労働力の主たるにない手の一員に組み込まれていたことが明らかである。そうして、かような諸事実に、控訴人が昭和四一年一一月二四日被控訴人に対し前記一掲記の申入れをするに至るまで契約面上は反覆継続して二か月ごとに契約を更新しながら約五年九か月を経過していることの明らかな事実をあわせれば、控訴会社において生産規模の著しい縮少等の特段の事情の生じない限り被控訴人を継続して雇傭する意思があり、その意思のもとに右のように長期にわたり被控訴人の雇傭を継続したものと認めるのが相当であり、被控訴人においても継続雇傭を希望しその意思で就労していたことが明らかである。そして、前記のように控訴人において被控訴人から前記短期の労働契約書を差し入れさせたのは、右のような特段の事情の生じた場合に臨時従業員である被控訴人に対し解雇の途に出る措置を確保するためのものであるというべく、(このような特別な事由は正規従業員に対する解雇事由としても妥当するであろう)これら諸般の事実をかんがみるときは、臨時従業員はその採用にあたり正規従業員に対する選考に比して簡易に行われるが、一定期間経過後には正規従業員への登用の途を開いている点で、少くともその期間の当初においては雇傭の臨時性、暫定性をもっと同時に、長期の雇傭に耐えるべき従業員たるの適性を判別するための試用の意味をも帯有するものというべきではあるが、少くとも当初の期間が逐次更新され、従業員としての適性を判別しうるための一定期間、本件では正規従業員への登用資格を取得する一年の期間を経過したころには右当事者間において、労働契約の形式面はともかくとして、期間の定めのない雇傭契約が成立したものであると認めるのが相当である。 かようなしだいであるから、右労働契約書中、右掲記の条項についての被控訴人の意思表示に関する部分はその表示された意味は前認定の期間の定めのない雇傭契約において、これを前記の期間の定めのある雇傭契約に変更し、あるいは昭和四六年六月三〇日限り合意解約するものと解されるけれども、右意思表示は表意者である被控訴人においてその真意でないことを知ってした意思表示であることが明らかであり、かつ前記のような事情に照せば右意思表示を受けた前記斉藤組長および西岡勤労課長(西岡が被控訴人の右意思表示を受けたことは、原審における同人の証言によりこれを認めることができる)において、たとえ明確に被控訴人の真意を知らなかったとしても、控訴会社の意図を実現する直接の担当者であるという自己の立場にあって右事態を見れば、会社側の右意図がそのまま被控訴人に容認されたものでなく、被控訴人の真意は別にあることの消息は容易に知ることができたはずであるといわなければならない。そうして、弁論の全趣旨によれば、控訴人は、少くともA勤労課長を代理人として被控訴人に対し折衝し、被控訴人から右意思表示を受領したと認めることができるから、控訴人は、少くとも民法第九三条但書にいう「表意者の真意を知ることを得べかりしとき」に該当し、右労働契約書中、被控訴人の前記意思表示に関する部分は無効のものといわなければならない。 |