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ID番号 00385
事件名 労働契約存在確認等請求事件
いわゆる事件名 東芝臨時工解雇事件
争点
事案概要  電気機器等の製造販売を目的とする会社に契約期間を二ケ月と記載してある臨時従業員として雇用され、一〇ケ月ないし三年九ケ月にわたり右契約を反覆更新してきた臨時工が雇止めされたためにその効力を争った事例。
参照法条 労働基準法89条1項3号,2章
民法626条,629条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1974年7月22日
裁判所名 最高一小
裁判形式 判決
事件番号 昭和45年 (オ) 1175 
裁判結果 棄却
出典 民集28巻5号927頁/時報752号27頁/タイムズ312号151頁/裁判所時報649号4頁/裁判集民112号361頁
審級関係 控訴審/00377/東京高/昭45. 9.30/昭和43年(ネ)1844号
評釈論文 佐伯仁・月刊労働問題203号122頁/小西国友・昭49重判解説183頁/松岡三郎・労働法律旬報867号7頁/松田保彦・判例タイムズ351号138頁/中村洋二郎・労働法律旬報867号14頁/富沢達・ジュリスト577号101頁/萬井隆令・民商法雑誌72巻6号1071頁
判決理由  原判決は、以上の事実関係からすれば、本件各労働契約においては、上告会社としても景気変動等の原因による労働力の過剰状態を生じないかぎり契約が継続することを予定していたものであって、実質において、当事者双方とも、期間は一応二か月と定められてはいるが、いずれかから格別の意思表示がなければ当然更新されるべき労働契約を締結する意思であったものと解するのが相当であり、したがって、本件各労働契約は、期間の満了毎に当然更新を重ねてあたかも期間の定めのない契約と実質的に異ならない状態で存在していたものといわなければならず、本件各傭止めの意思表示は右のような契約を終了させる趣旨のもとにされたのであるから、実質において解雇の意思表示にあたる、とするのであり、また、そうである以上、本件各傭止めの効力の判断にあたっては、その実質にかんがみ、解雇に関する法理を類推すべきであるとするものであることが明らかであって、上記の事実関係のもとにおけるその認定判断は、正当として首肯することができ、その過程に所論の違法はない。
 そこで考えるに、就業規則に解雇事由が明示されている場合には、解雇は就業規則の適用として行われるものであり、したがってその効力も右解雇事由の存否のいかんによって決せらるべきであるが、右事由に形式的に該当する場合でも、それを理由とする解雇が著しく苛酷にわたる等相当でないときは解雇権を行使することができないものと解すべきである。ところで、本件臨就規八条は上告会社における基幹臨時工の解雇事由を列記しており、そのうち同条三号は契約期間の満了を解雇事由として掲げているが、上記のように本件各労働契約が期間の満了毎に当然更新を重ねて実質上期間の定めのない契約と異ならない状態にあったこと、及び上記のような上告会社における基幹臨時工の採用、傭止めの実態、その作業内容、被上告人らの採用時及びその後における被上告人らに対する上告会社側の言動等にかんがみるときは、本件労働契約においては、単に期間が満了したという理由だけでは上告会社において傭止めを行わず、被上告人らもまたこれを期待、信頼し、このような相互関係のもとに労働契約関係が存続、維持されてきたものというべきである。そして、このような場合には、経済事情の変動により剰員を生じる等上告会社において従来の取扱いを変更して右条項を発動してもやむをえないと認められる特段の事情の存しないかぎり、期間満了を理由として傭止めをすることは、信義則上からも許されないものといわなければならない。しかるに、この点につき上告会社はなんら主張立証するところがないのである。もっとも、前記のように臨就規八条は、期間中における解雇事由を列記しているから、これらの事由に該当する場合には傭止めをすることも許されるというべきであるが、この点につき原判決は上告会社の主張する本件各傭止めの理由がこれらの事由に該当するものでないとしており、右判断はその適法に確定した事実関係に照らしていずれも相当というべきであって、その過程にも所論の違法はない。そうすると、上告会社のした被上告人らに対する本件傭止めは臨就規八条に基づく解雇としての効力を有するものではなく、これと同趣旨に出た原判決に所論の違法はない。