全 情 報

ID番号 00386
事件名 従業員地位保全金員支払仮処分事件
いわゆる事件名 朝日放送事件
争点
事案概要  民間放送の番組作成に関わる庶務一般に従事していた、雇用期間を六ケ月期間の二年満期とする女子アルバイトらが、雇用期間満了を理由に退職したものとして取扱われたので従業員としての地位保全、賃金仮払の仮処分を申請した事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法14条
民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1975年3月27日
裁判所名 大阪地
裁判形式 判決
事件番号 昭和48年 (ヨ) 2269 
昭和49年 (ヨ) 970 
裁判結果 認容(確定)
出典 時報782号93頁
審級関係
評釈論文 萩沢清彦・判例評論203号30頁
判決理由  申請人らと会社の間で取り決められた六ケ月という期間の定めは、臨就規四条一項に依拠した単なる形式上のものに過ぎないものであって、申請人らと会社との間の雇用契約は、実質的には、契約締結後二年で雇い止めすることを内容とする、期間の定めのない雇用契約と異ならないというべきである。
 (中 略)
 右二年雇い止め条項の法的性質は、労働者を拘束する意味の労基法一四条の労働契約期間ではなく、二年の雇用期間経過を解約の条件とする定年解雇制類似の性質を具有するものとみるべきである。すなわち、前記のとおり、会社が申請人らを当初の契約締結から二年未満内に到来する六ケ月の期間満了時に雇い止めを行なうには、臨就規二六条二項列記の解約事由に該当する事由を必要とするのに対し、前記臨就規四条二項は、二年の雇用期間満了時において、会社は臨就規二六条二項列記の解約事由に制約されることなく自由に雇い止めを行ないうる趣旨を定めたものと解される。
 しかしながら、いかに定年解雇制類似の自由な雇い止めとはいっても、そこには自ら公序良俗、信義則、権利濫用法則等のいわゆる一般条項による制約があり、これを離れた恣意的行為が許されるものではなく、とりわけ右雇い止めは実質上若年定年を理由とする解雇と同様の機能を営むものであるから、解雇の法理を類推してその雇い止めによる解約が著しく苛酷にわたる等相当でないときは権利濫用の法理により無効となると考えられる。
 (中 略)
 右各事実を考え併せると、本件雇い止めは被申請人会社において何ら合理的利益もなく、専ら申請人にその職場を奪う損害と苦痛を強いるものであることが、推認できるから、被申請人の行なった本件雇い止めは著しく苛酷にわたるものであっていずれも権利濫用として許されないものといわねばならない。