ID番号 | : | 00388 |
事件名 | : | 雇用関係存在確認請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日野自動車事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 車体の製造課から塗装課への応援命令を拒否したことを主たる理由とし、その後業務外の負傷により身体障害者となったことを予備的理由とする自動車メーカーの準社員(臨時工)に対する契約更新拒否(解雇)の効力が争われた事例。(一審 請求認容、 二審 原判決変更、請求棄却) |
参照法条 | : | 民法1条3項,626条 労働基準法21条,2章 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1977年11月22日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和49年 (ネ) 2626 |
裁判結果 | : | 原判決変更、棄却 |
出典 | : | 労働判例290号47頁 |
審級関係 | : | 一審/東京地八王子支/昭49.10.25/昭和47年(ワ)150号 |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔解雇―労基法20条違反の解雇の効力〕 してみれば、被控訴人は控訴人のした前記解雇の時点において、身体に障害があり、就労にたえなかったのみならず、近い将来における回復の見込もなかったというほかはなく、したがって控訴人は上記就業規則所定の事由に該当するものとして被控訴人を解雇しうるものといわなければならない。そして控訴人のした前記解雇の意思表示は解雇予告手当を支給してなされたものでないが(この事実は当事者間に争いがない。)、そのために右解雇の意思表示が無効となるものではなく、三〇日の期間を経過した後に解雇の効力を生ずるものと解されるから、本件雇傭契約は、昭和五〇年一〇月二六日限り終了したものというべきである。 六 被控訴人の主張第二の一の6について判断する。 (一)まず被控訴人は、企業者の社会的責任なるものを云為して控訴人による被控訴人身体障害を理由とする解雇が解雇権の濫用であると主張する。しかし被控訴人のいうように、企業者に対し正当な理由のない限りその雇傭する労働者を解雇しないことがその社会的責務として要請されるとしても、このことから身体障害のため雇傭の目的を達することができない者を解雇することが解雇権の濫用に当たるとの結論を導き出すことができないことは明らかであるし、その他被控訴人の主張するような事実を考慮に入れたとしても、なおこれを解雇権の濫用であるとすることはできない。それ故、被控訴人の右主張は採用できない。 (二)次に被控訴人は右解雇が公序良俗に反し無効であると主張する。なるほど被控訴人が前記身体障害により完全に労働能力を喪失したものではなく、軽微な労務ならば支障なく遂行しうるであろうことは前記鑑定の結果によって知りうるところであるし、控訴人のようないわゆる大企業といわれる規模の会社において、職場外の事故によって労働能力を一部喪失した従業員に対し、解雇でなく、配置転換をもって臨むことは決して不可能ではなく、またこれを求めてもあながち難きを強いるものとはいえず、むしろある意味ではそれが望ましいといえないこともないが、しかし特段の事情のないかぎり、これを控訴人の義務として要求し、かかる措置をとらなかったことをもって社会観念上重大な非難に値する行為で、公序良俗に違反するものとすることはできない。そして本件においては右の特段の事情について格別の主張立証がないから、被控訴人の上記公序良俗違反の主張も採用できない。 〔解雇―短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 準社員雇傭契約承認書において支障がある場合には雇傭契約の更新がなされないとされている「支障」とは、景気変動のため過剰人員整理の必要が生じたような場合を別にすれば、当該準社員に就業規則所定の解雇事由に該当するものがなくても、その勤務成績、勤務態度、能力その他において社員としての雇傭関係を維持するに足りる適格性を欠くと評価するのももっともと認められるような事由が存する場合を指称するものと解するのが相当である。 (中 略) 控訴人につき社員としての雇傭関係を維持するに足りる適格性を欠くと評価するのももっともと認められる事由があるとするに足りないというべきである。 (中 略) 控訴人の右主張の適否は原判決別紙二「準社員雇傭契約承認書」記3の条項の解釈如何にかかわるものであるところ、右条項において一年の期間が定められているのは、準社員が正社員の補給源たる面をも有することにかんがみ、右期間中における勤務成績、勤務態度などを総合的に評価し、当該準社員が正社員としての適格性を保有するかどうかを判断するためのいわば適格性の審査期間として設けられたものと認められ、かかる条項の趣旨に照らすときは、同条項にいう「通算勤続一年以内に(正社員に)登用されなかった場合」とは、現実に一年間準社員として勤続したにもかかわらず選考に合格することができず、結局正社員に登用されるにいたらなかった場合を意味し、本件における被控訴人のように控訴人の無効な雇傭契約更新拒絶により、その意に反して職場から排除され、現実に勤務した時間が一年に満たない者については適用されないものと解するのが相当である。 |