全 情 報

ID番号 00394
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 旭硝子事件
争点
事案概要  契約期間三ケ月の臨時工に対し使用者がなした契約更新拒絶につき、権利の濫用であるとして、従業員たる地位を有することの確認を求めた仮処分事例。
参照法条 労働基準法21条
民法1条3項,628条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1980年4月9日
裁判所名 千葉地
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ヨ) 89 
昭和50年 (ヨ) 148 
裁判結果 一部認容 一部却下(控訴)
出典 労働民例集31巻2号448頁/時報973号123頁/労働判例340号41頁/労経速報1048号3頁
審級関係 控訴審/00400/東京高/昭58. 9.20/昭和55年(ネ)1003号
評釈論文 下井隆史・判例評論266号45頁
判決理由  船橋工場における臨時工契約は、基本的には期間を三か月と定めた有期の労働契約であるが、三か月を経過した時点で債務者会社において特に更新拒絶の意思表示(以下雇止めとはこの意味において用いる)をしない限り、期間を三か月とし就業規則で定められた契約回数に応じた賃金支給を内容とする労働契約の締結が反覆継続されることが当初から予定されていた法律関係であるということができる。その意味では一種の期間の定めのない契約であるといって差支えなく、雇止めに関しては、(イ)労働基準法二〇条所定の手続を履行することが必要であり、また、(ロ)それが不当労働行為意図、思想信条による差別意図実現のためのみになされたり、又は(ハ)社会観念上明白に不当な理由のもとになされた場合にはその雇止めの意思表示は無効なものとして、その意思表示がなかった場合と同じく契約更新の効果が生ずるものと解するのが相当である。但し、既に述べたように臨時工契約が基本的には短期的有期契約としての性格を有するものである以上雇止めにあたり使用者は本人の勤務成績のほか、過去昭和四〇年および昭和四六年の二回の事例のごとく景気の動向、会社の経営事情その他企業運営の必要性を広く勘案してその要否を決することができると解すべきであるから、この観点に立って右の(ハ)の場合の効力につき判定すべきである。もとよりこのように使用者側に雇止めにつき幅広い裁量を認めてもそれは使用者の恣意を許すものではなく、労働者側の事情、特に家庭状況、補償措置、更新回数等を勘案してその効力を検討しなければならない(更新回数を考慮するのは、更新が重なればその実質において一般の期限の定めのない契約に近似してくるし、労働者側においてもその賃金収入に対する生活の依存度が高くなるものと推認し得るからである)。