ID番号 | : | 00395 |
事件名 | : | 労働契約存在確認等請求控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 日立メディコ事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 「臨時工」に対する「解雇」につき、期間の定めのない労働契約が締結されており、右解雇には解雇権の濫用があるとして、労働契約が存在することの確認を求めた事例。 |
参照法条 | : | 民法1条3項,625条 労働基準法21条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め) |
裁判年月日 | : | 1980年12月16日 |
裁判所名 | : | 東京高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和52年 (ネ) 178 |
裁判結果 | : | 取消(上告) |
出典 | : | 労働民例集31巻6号1224頁/東高民時報31巻12号261頁/労働判例354号35頁/労経速報1073号11頁 |
審級関係 | : | 上告審/03801/最高一小/昭61.12. 4/昭和56年(オ)225号 |
評釈論文 | : | 小宮文人・季刊労働法120号130頁 |
判決理由 | : | 〔解雇―短期労働契約の更新拒否(雇止め)〕 期間を定めて雇用するいわゆる臨時工を比較的簡易な採用手続で採用し、不況時の雇用量の調整を図ることは、常に景気変動の影響を受ける私企業としては、やむを得ないところがあるのみならず、労働者一般からしても、比較的容易に短期の職を得る道がひらける点において、必ずしも利益がないわけではなく、労働契約に短期の期間を定めることは、必ずしも公序良俗に反するということはできない。 被控訴人と控訴人との間の労働契約は、五回にわたり反覆更新されたことは右のとおりであり、柏工場の臨時員については雇用関係のある程度の継続が期待されていたと認められることは前記二に説示したとおりであるが、雇用関係継続の期待の下に期間の定めある労働契約が反覆更新されたとしても、そのことにより、それが期間の定めのない契約に転化するとの法理は肯認し難く、いずれかの時点において当事者双方の期間の定めのない労働契約を締結する旨の明示又は黙示の意思の合致が存在しない限り、期間の定めのない契約となるものではない。そして、本件において右のような意思の合致を認めるべき証拠はない。 柏工場の臨時員は季節的労働とか特定物の製作とか臨時的作業のために雇用されるものではなく、従事する作業もそのようなものではなかったこと、また、右臨時員の雇用関係はある程度の継続が期待されており、現に被控訴人と控訴人との間においても五回にわたり契約が更新されていることも前示のとおりであるから、このような労働者を期間満了によって傭止めにするに当たっては、解雇に関する法理が類推され、解雇であれば解雇権の濫用、信義則違反又は不当労働行為などに該当し、解雇無効とされるような事実関係の下に、使用者が新契約を締結しなかったとするならば、期間満了後における使用者と労働者間の法律関係は従前の労働契約が更新されたのと同様の法律関係となるものと解せられる。 (中 略) もっともその雇用関係が比較的簡易な採用手続で締結された短期的有期契約を前提とするものである以上、傭止めの効力を判断すべき基準は、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めのない労働契約を締結しているいわゆる本工を解雇する場合とはおのずから合理的な差異があるべきことはいうまでもない。 〔解雇―整理解雇―整理解雇基準〕 臨時員の一部につき傭止めを行なう場合に、まず臨時員の中から希望退職者を募るという方法をとるのが妥当であるかどうかはさておき、臨時員全員の傭止めを行なう場合、これに先立ち期間の定めなく雇用されている従業員につき、たとえ希望退職者募集の方法によるとしても、その人員削減を図るのが相当であるとすべき事由は見当らず、むしろこれに先立ち臨時員の傭止めが行なわれてもやむを得ないものというべきである。けだし柏工場の臨時員は、景気変動に対応し、不況時に雇用量の調整を図るという前提の下に、比較的簡易な採用手続によって期間を定めて雇用されたものであること前示のとおりであるから、たとえ雇用関係のある程度の存続が期待されていたとしても、いわゆる終身雇用の期待の下に期間の定めなく雇用されている従業員とは、企業との結び付きの度合いにおいておのずから差異があるのであって、むしろ特段の事情のない限り、まず臨時員の削減を図るのが社会的にみても合理的というべきであるのみならず、期間の定めなく雇用されている従業員は、一般的には臨時員に比べ、より企業の基幹たるべき労働者なのであるから、人員縮少後における企業の効率的運営という観点からすれば、たとえ希望退職者募集という方法によるとしても、先にこのような基幹労働者の削減を図ることが合理的であるとは到底いえないからである。 |