全 情 報

ID番号 00397
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京中華学校事件
争点
事案概要  在日中華民国人の子弟に対する母国教育を実施することを目的とする学校において毎年有効期間一年間の「聘書」なる辞令を一〇年間受けてきた教員が、高校から小学校教員への変更を内容とする「聘書」の受領を拒否したため、雇止めされたのに対し、地位保全等求めた仮処分申請事例。(申請却下)
参照法条 労働基準法21条
民法628条
体系項目 解雇(民事) / 短期労働契約の更新拒否(雇止め)
裁判年月日 1983年3月15日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和56年 (ヨ) 2250 
裁判結果 却下(抗告)
出典 時報1075号158頁/タイムズ506号110頁/労経速報1161号14頁
審級関係
評釈論文
判決理由  《証拠略》によれば、債権者は、昭和四六年四月から一〇年間にわたって継続して債務者学校に雇用され、その業務に従事してきたものではあるが、債務者は、教員任用の方式として、雇用するすべての教員に対し、毎年四月一日から翌年三月三一日までの一年間を有効期間とする「聘書」という辞令を交付するのを常としており、同聘書には、担任学科、兼任職務、聘書有効期間のほか、規約として(1)招聘を受諾した教員は本校の各規則および教職員服務規定に従って熱心に勤務しなければならない、(2)招聘有効期間満了後五日を経過しても新しい聘書の授受がない場合には招聘は継続しない、(3)もし本校の規則を遵守しない場合あるいはその任務を全うすることができない者は学校より招聘の解約をすることができる旨の各規定が明記され、債権者に対しても右雇用の継続に際しては必ず各年度ごとに一年間の有効期間を定めた同様の聘書を交付していたこと、債権者と債務者間の雇用契約に関する書面としては右聘書が唯一のものであったことが一応認められ、このような事実からすれば、債権者と債務者間の本件雇用契約は一年の期間を限った雇用契約であって、その雇用契約が一年ごとに聘書の授受によって更新されていたものであることが明らかであり、これを期間の定めのない契約と認めることはできず、また、更新がくり返されたことによって期間の定めのない契約に転化したものと認める余地もないものといわなければならない。《証拠略》によれば、昭和五五年五月現在における債務者学校の職員合計三六名のうち在職期間が三年未満の者が一八名(そのうち一年未満の者は一五名)にのぼり、しかも、毎年相当数の職員が入れかわっていることが認められるが、このような事実なども、債務者学校の職員の雇用契約が一年ごとに更新されているものであることの証左ということができる。
 (中 略)
 してみると、債権者と債務者間の雇用契約が一年の期間を限った雇用契約であって、その雇用契約が一年ごとに聘書の授受によって更新されていたものであることは前判示のとおりであるから、右のとおり昭和五六年度の新聘書の授受がなされなかった以上、債権者と債務者間の雇用関係は昭和五五年度の聘書の満了期限である昭和五六年三月三一日をもって終了したものというべきである。