判決理由 |
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そこで、甲第一号証の通知書を以てなした会社側の意思表示の法律上の性質について考えてみると、原告は右意思表示は一方的解雇通告以外の何物でもなく、退職願が提出されても雇傭契約の合意解除が成立する余地はない旨主張するけれども、右通告書でなされている意思表示全体の趣旨は被告が原告に対し、第一次に昭和二十五年十一月十五日を終期とする期限付雇傭契約の合意解除契約の申込をなすとともに、第二次に同月十六日を始期とし且つ退社願が同月十五日までに提出されないという消極的事実の確定を停止条件とする始期付停止条件付解雇の意思表示を行ったものと解するのが相当である。そうだとすれば原告が通告書に基き承諾期限である同月十五日までに退社願を提出すれば、原被告間の雇傭契約はその提出の日に承諾がなされたものとして合意解除契約が成立し、その効力の発生を阻げる特別の事由のない限りその時合意解除の効力も生じ雇傭関係は消滅するものであり、従って始期付停止条件付解雇の意思表示はその効力を生ずる余地がないものと解せられるところ、前示認定のとおり原告は被告の右のような意思表示に対し昭和二十五年十一月十四日別紙二の退社願(乙第一号証)を提出して合意解除の申込を承諾する旨の意思表示をなしたのであるから、原被告間に昭和二十二年十一月二十一日成立した雇傭契約はこの時特別の事由のない限り(原告のこの点についての主張については後に判断する)合意解除せられたものといわねばならない。 |