ID番号 | : | 00418 |
事件名 | : | 仮処分控訴事件 |
いわゆる事件名 | : | 小野田セメント事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 会社の設定した希望退職募集基準中の「有夫の女子」「三〇歳以上の女子」に該当するとして退職勧奨を受け、これに従い合意退職した女子従業員が、これらの基準は性別による差別的取扱いに当り無効であるから、右退職の合意も無効であるとして地位保全等求めた仮処分申請事件の控訴審。(控訴認容、労働者敗訴) |
参照法条 | : | 労働基準法2章 |
体系項目 | : | 退職 / 合意解約 |
裁判年月日 | : | 1971年11月22日 |
裁判所名 | : | 仙台高 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和43年 (ネ) 166 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集22巻6号1113頁/タイムズ274号110頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 香川孝三・ジュリスト520号127頁/三浦恵司・昭46重判解説178頁 |
判決理由 | : | 被控訴人は、「有夫の女子」「三〇歳以上の女子」という違憲違法な指名解雇基準に基く確定的に迫った指名解雇と密接不可分の関係において成立した本件合意解約は公序良俗に反して無効であると主張するので、以下本件合意解約の効力について判断する。 (中 略) 人員整理にあたり、退職願の提出により合意解約が成立した場合、その背後に違法な解雇の圧力が加わっていたとしても、合意解約の意思表示それ自体に強迫その他の瑕疵がない以上背後にある解雇に無効事由があっても、特段の事情のない限り、それが合意解約の効力に影響を及ぼすことはありえないものというべきである。 ここに特段の事情というのは、解雇と同視しうる、換言すれば解雇と同一に評価されてしかるべき合意解約の場合を指すのであり、使用者において合意解約という形式をとって違法な解雇意思を実現しようとするような事情がこれに該当する。 すなわち(イ)使用者が特定の労働者に対する違法な解雇を回避する意図のもとに、(ロ)右解雇の圧力を背景として当該労働者に対し退職願の提出を積極的に働きかけ、(ハ)その結果当該労働者が認識しえたであろう使用者の行動その他諸般の状況を基礎として考えた場合に、何人も解雇が確定的であると判断すべき理由があり、(ニ)そのため当該労働者において解雇は免れないものとの判断のもとにやむなく退職願を提出することにより合意解約が成立するに至ったような事情がこれに該当する。 (中 略) 右によれば、本件合意解約の成立にあたり、控訴会社において被控訴人に対する違法な解雇を回避する意図を有していたものとはいえないのみならず、未だ被控訴人に対する解雇が確定的であると判断しうる状況にあったとも認められないから、結局被控訴人の前記主張は失当として排斥すべきである。 |