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ID番号 00432
事件名 地位確認等請求控訴、附帯控訴事件
いわゆる事件名 大隈鉄工所事件
争点
事案概要  退職届を撤回したことにつき、右届は錯誤による無効又は強迫による取消を主張し、あるいは撤回は有効であるとして、従業員としての地位の確認を求めた事例。
参照法条 民法95条,96条,627条
労働基準法115条
体系項目 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 賃金請求権と時効
退職 / 退職願 / 退職願いの撤回
裁判年月日 1981年11月30日
裁判所名 名古屋高
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ネ) 567 
昭和55年 (ネ) 259 
裁判結果 一部変更 一部棄却(上告)
出典 時報1045号130頁/タイムズ459号113頁/労経速報1301号6頁
審級関係 上告審/03093/最高三小/昭62. 9.18/昭和57年(オ)327号
評釈論文 安枝英のぶ・判例評論288号53頁
判決理由  〔賃金―賃金の支払い原則―賃金請求権と時効〕
 消滅時効中断の原因となるべき裁判上の請求は、具体的な請求権を明示してなす給付訴訟のみに限定されるものではなく、その具体的な請求権が派生する基本的法律関係の存在確認を目的とする訴訟もこれに包含されるものと解すべきところ、被控訴人は本件訴えの当初より本件賃金及び一時金支払請求権が派生する基本的法律関係である控訴人の従業員たる地位の確認を求めているから、控訴人が時効により消滅したと主張する債権部分は、右確認の訴えの提起により時効が中断したかあるいは時効が進行しなくなったものと解すべきである。
 〔退職―退職願―退職願いの撤回〕
 一般に雇傭関係の合意解約の申入れは、雇傭契約終了の合意(契約)に対する申込みとしての意義を有するのであるが、これに対して使用者が承諾の意思表示をし、雇傭契約終了の効果が発生するまでは、使用者に不測の損害を与える等信義に反すると認められるような特段の事情がない限り、被用者は自由にこれを撤回することができるものと解するのが相当である。けだし、民法はその五二一条以下において契約の申込みに対し一定の拘束力を認めているが、右の規定はこれから新しく契約を締結しようとする申込みの場合に典型的に機能するのであって、これまで継続的に存続してきた雇傭関係を終了させようとする合意についての申込みの場合とは同列に論ずることができない。のみならず、被用者からなされた雇傭契約合意解約の申入れの場合には、一時的な衝動から不用意になされることも往々にしてあることを考えると、雇傭契約を従前どおり存続させる趣旨での合意解約申入れの撤回は原則として自由にこれを許し、一方これから生ずる不正義な結果は、信義に反すると認められる特段の事情が存する場合に、一定の制限を加えることにより回避することができると解せられるからである。