ID番号 | : | 00436 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | エール・フランス事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 結核性髄膜炎に罹患して病気休職をしていた従業員が、病気が治癒したとして会社に復職を申し出たところ、めまい、耳鳴り等の後遺症があるとして右申し出を拒否され、休職期間経過を理由に退職扱いとされたのに対し、地位保全等求めた仮処分申請の事例。(一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法2章 民法627条 |
体系項目 | : | 休職 / 休職の終了・満了 |
裁判年月日 | : | 1984年1月27日 |
裁判所名 | : | 東京地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和56年 (ヨ) 2347 |
裁判結果 | : | 一部認容 一部却下(控訴) |
出典 | : | 時報1106号147頁/労経速報1177号9頁/労働判例423号23頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 古川陽二・労働判例449号12頁/香川孝三・季刊実務民事法7号226頁/新谷真人ほか・季刊労働法132号170頁 |
判決理由 | : | 右のような自然退職の規定は、休職期間満了時になお休職事由が消滅していない場合に、期間満了によって当然に復職となったと解したうえで改めて使用者が当該従業員を解雇するという迂遠の手続を回避するものとして合理性を有するものではあるが、本件におけるように、病気休職期間満了時に従業員が自己の傷病は治癒したとして復職を申し出たのに対し使用者の側ではその治癒がまだ充分ではないとして復職を拒否する場合の同規定の適用解釈にあたっては、病気休職制度は傷病により労務の提供が不能となった労務者が直ちに使用者から解雇されることのないよう一定期間使用者の解雇権の行使を制限して労働者を保護する制度であることに思いを至せば、右に述べた自然退職の規定の合理性の範囲を逸脱して使用者の有する解雇権の行使を実質的により容易ならしめる結果を招来することのないよう慎重に考慮しなければならない。 したがって、使用者が従業員の復職の可能性を否定して更に休職期間を延長するのであればともかく、復職を否定して休職期間満了による自然退職扱にする場合にあっては、被申請人の主張するごとく、会社が客観的に当該従業員が原職に復帰しうると認める保障のない限り復職させる義務を会社に負わせるものではなく休職期間の経過により自動的に退職の効果が発生すると解することは、復職を申し出る従業員に対して客観的に原職に復帰しうるまでに傷病が治癒したことの立証の責任を負わせることとなり、休職中の従業員の復職を実質的に困難ならしめる場合も生ずることになるから妥当ではなく、使用者が当該従業員が復職することを容認しえない事由を主張立証してはじめてその復職を拒否して自然退職の効果の発生を主張しうるものと解するのが相当である。そして、傷病が治癒していないことをもって復職を容認しえない旨を主張する場合にあっては、単に傷病が完治していないこと、あるいは従前の職務を従前どおりに行えないことを主張立証すれば足りるのではなく、治癒の程度が不完全なために労務の提供が不完全であり、かつ、その程度が、今後の完治の見込みや、復職が予定される職場の諸般の事情等を考慮して、解雇を正当視しうるほどのものであることまでをも主張立証することを要するものと思料する。 (中 略) 以上をもとに、被申請人が申請人に対してなした本件退職取扱の当否について判断するに、(中 略)。 前認定の運航搭載課の職場事情のもとにおいて申請人を他の課員の協力を得て当初の間はドキュメンティストの業務のみを行なわせながら徐々に通常勤務に服させていくことも充分に考慮すべきであり、前記の後遺症の回復の見通しについての調査をすることなく、また、復職にあたって右のような配慮を全く考慮することなく、単にA医師の判断のみを尊重して復職不可能と判断した被申請人の措置は決して妥当なものとは認められない。 |