全 情 報

ID番号 00460
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 能登川町事件
争点
事案概要  個人経営の幼稚園の教諭が、幼稚園が町営に移管されるさいに、町職員定年年齢を超過していることを理由として不採用の通知を受けたので、不採用の意思表示の効力の停止、従前と同じ状態での就労等の仮処分を申請した事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法2章,10条
体系項目 労働契約(民事) / 労働契約の承継 / 新会社設立
裁判年月日 1976年4月9日
裁判所名 大津地彦根支
裁判形式 決定
事件番号 昭和51年 (ヨ) 11 
裁判結果 認容
出典 労法旬920号64頁
審級関係
評釈論文
判決理由  右事実によれば、被申請人の意図するところは町立幼稚園の新設とみることができるものの、A幼稚園の従前の物的施設はすべてひきつがれ、在園児についても制限なく受入れられ、ひきつがれているのであり、形式的にも設置者変更という引継の形がとられているのであって(なおA幼稚園の教諭の採用試験に至っては被申請人自身全く形式的なものと認めている)、A幼稚園として存した統一体はその同一性を維持して存続しているものとみることができ、たんにその管理経営主体が交替したにとどまるものと解することができる。そしてこのような場合は、法律的にも従前の経営主体との労働関係は包括的に新経営主体に承継されるものとみるのを相当とする。本件のように一方の主体が地方公共団体であっても、これを別異に解さなければならない合理的理由は見出し難い。
 そうするとこの承継に際し、特定人を排除することは実質的にその特定人の解雇と同一であるから、正当な事由がなければその受入を拒否しえないものといわなければならない。申請人については、被申請人の定年制基準内規がその拒否理由となっているが、かかる理由は地方公務員法に抵触するものというべく正当な事由とはなりえないものと解される。
 従って申請人は被申請人の職員となったものとみなければならず、給与生活者と認められる申請人において、現在の取扱いは回復できない損害をうけるものということができるから、仮の地位を定める仮処分として、主文のとおり決定する。
 (中 略)
 (注)
 主 文
 申請人が被申請人に対して提起すべき本案判決の確定に至るまで、仮に申請人が被申請人の職員であることを定める。被申請人は申請人に対し、昭和五一年四月一日以降右本案判決の確定に至るまで、仮に申請人を申請人・申請人外学校法人みどり学園間の労働契約所定の労働条件に従い、幼稚園教諭として就労させなければならない。