全 情 報

ID番号 00501
事件名 地位保全仮処分申請事件
いわゆる事件名 日本メール・オーダー事件
争点
事案概要  タイピストが母指腱鞘炎および頚肩腕障害のため病気欠勤中に就業規則に基づき休職処分に付され、その後休職期間が満了したとして解雇を通告されたので、従業員としての地位保全、賃金の仮払の仮処分を申請した事例。(申請認容)
参照法条 労働基準法19条
体系項目 解雇(民事) / 解雇制限(労基法19条) / 解雇制限と業務上・外
裁判年月日 1974年10月4日
裁判所名 東京地
裁判形式 決定
事件番号 昭和49年 (ヨ) 2298 
裁判結果 認容
出典 時報765号105頁/タイムズ322号251頁
審級関係
評釈論文 佐藤進・労働判例211号4頁
判決理由  一般に業務に伴う有害な長期作業の結果発病するいわゆる職業性疾病といわれるものは、長期間にわたる有害な作業条件の下での労働の悪影響が蓄積して徐々に発病するものであるだけに業務起因性を直接明らかならしめるものはない。
 しかし、本件においては、申請人の業務が手指を過度に使用する作業であって、申請人がこれに途中中断した期間があるとはいえ長期間従事してきた経過及び発病の模様は前記認定のとおりであり、疎明資料中のA医師の診断書及び同医師の診断意見書によれば、申請人の病気については、自覚症状の外、他覚的症状として両肩筋硬結が認められ、頚椎可動性良好、リウマチ反応陰性、血沈正常で炎症所見なし、血液検査尿検査では貧血及び腎障害の所見なし、頚椎レントゲンで頚椎の骨変化及び伸展異常を認めず、というのであり、要するに申請人の作業以外で右症状を発する可能性のある疾患は諸検査の結果認められないということである。
 さらに、疎明資料によれば、申請人が出産のため約四ケ月業務から離れた間に前記症状は一時消えたこと、申請人が欠勤をはじめた昭和四八年八月三一日当時申請人の所属していたタイプ係で略同種の作業に従事していた五人のうち三人までが頚肩腕障害に罹患していたことが一応認められる。
 その上、全疎明資料によっても、申請人の病気がその作業以外の原因や他の疾患に起因する可能性は全くうかがうことはできない。
 これらの各事実を総合すれば、申請人の病気は申請人の前記作業に起因するか、或は少くともそれが強い原因の一つになっているものと推認するに難くない。すなわち申請人の病気はその業務との間に相当因果関係がある業務上の病気であると認めるのが相当である。
 そうであれば、本件休職処分は前記病気の業務起因性の判断を誤っているので被申請人就業規則二五条三号に違反し、本件解雇処分は業務上の病気の療養期間中になされたこととなるので労働基準法一九条一項に違反し、いずれも無効であるといわなければならない。