全 情 報

ID番号 00513
事件名 給料及び退職手当金等請求事件
いわゆる事件名 三井木船建造事件
争点
事案概要  退職にともない退職手当等の請求は認容されたが、解雇予告手当の支払については、本件は合意解約であって労働基準法二〇条は適用されないとした事例。
参照法条 民法627条1項
労働基準法20条
労働基準法119条
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告 / 合意解約と解雇予告
退職 / 合意解約
裁判年月日 1953年9月3日
裁判所名 鳥取地米子支
裁判形式 判決
事件番号 昭和25年 (ワ) 75 
裁判結果
出典 労働民例集4巻5号468頁
審級関係
評釈論文
判決理由  そうして被告が叙上原告等の退職の申出を承諾して解雇するにつき労基法第二〇条第一項所定の期間を置く解雇の予告を為さなかつた事実は当事者間に争のないところであるが、このように従業員たる労働者から事業主たる使用者に即時退職の申入れを為し使用者がその申入れを承諾して労資双方の合意により即時解雇の効力を生ぜしめようとする場合には労基法第二〇条の規定は適用がないのであつて専ら民法の原則によつて合意解雇についての効力を定むべきである。けだし労基法第二〇条の規定は使用者が労働者を解雇しようとする場合に限り適用あるが為めである。そこで民法雇傭に関する第六二七条第一項によれば雇傭期間の定めのない雇傭にあつては当事者の何れからでも何時にても雇傭契約の解約の申入れが出来、申入れ後二週間の経過によつて解雇の効力が生ずるのであるから本条の場合には二週間の所謂告知期間の経過によつて相手方の意思従つてその諾否如何に拘らず当然に解雇の効力を生ずるものと解せられる。そうすると労働者からの申入れによつて使用者と労働者との合意で即時解雇の効力を生ぜしめようとする場合にも、なお当事者の意思に反してまでも本条により解雇の効力発生を規制しなければならないか又は当事者の意思の自由を認めるべきかの問題に逢着する。惟うに民法第六二七条第一項の規定が労働基準法第二〇条の規定と同様に解雇につき予告(告知)期間を設けるのは主として労働者の生活の保障即ち求職の余裕を奪われる不利益を防止してこれを保護しようとするにある点に鑑みれば労働者が自ら進んで使用者に即時解雇を申入れた場合は即時に解雇となることが却つて労働者の利益であると一応認めてよいわけであるから、このような場合には最早や保護の対象となる利益がなくなつたものと言えるので当事者の自由な意思に委せてその合意を有効とし、即時解雇の効力を生ずるものと解するのが相当である。