全 情 報

ID番号 00516
事件名 俸給等請求控訴事件
いわゆる事件名 細谷服装事件
争点
事案概要  労働基準法二〇条違反の解雇の効力と附加金の支払請求が争われた事例。(控訴棄却)
参照法条 労働基準法20条1項,114条
体系項目 解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力
雑則(民事) / 附加金
裁判年月日 1954年10月30日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (ネ) 899 
裁判結果
出典 労働民例集6巻1号95頁/東高民時報5巻11号272頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―労基法20条違反の解雇の効力〕
 よって按ずるに労働基準法第二十条の意図するところが、解雇により失職する労働者に対し他に就職の口を求めるに必要なる所定期間内の生活を保障せんとするにあることを思えば、同条の定める予告期間を設けず且つ予告手当の支払もせずになした解雇の意思表示は、これにより即時解雇としての効力を生じ得ないけれども、その解雇通告の本旨が、使用者において即時であると否とを問わず要するにその労働者を解雇しようとするにあって即時の解雇が認められない以上解雇する意思がないというのでない限り、右解雇通告はその後同条所定三十日の期間経過を俟ってその効力を生ずる至るものと解するを相当とすべく、かく解したからとて何等法の附与せんとする労働者の保護を薄からしめることはないのである。それ故被控訴人が控訴人に対し昭和二十四年八月四日なした前記解雇の通告は、その三十日後たる同年九月三日の経過と共に解雇の効力を生じ、控訴人と被控訴会社との間の雇傭関係は同日限りを以て終了したものというべきである。
 〔雑則―附加金〕
 控訴人はなお、労働基準法第百十四条に基く附加金の請求をするのであるが、同条の定める附加金なるものは、労働基準法の規定違背に対する一種の制裁たる性質を有し、労働者の請求に基き裁判所の命令によって課せられ、その命令を俟って始めて使用者の支払義務が発生するのであり、右規定違反あると同時に、労働者が当然使用者に対し附加金支払請求権を取得するものと解すべきでないから、控訴人解雇に当って被控訴人側に労働基準法第二十条の違反があっても、その後前記の如く予告手当に相当する金額の支払を完了し、控訴人の本件附加金請求の申立前既に被控訴人の義務違背の状況が消滅している以上、もはや被控訴人に対し附加金の支払を命ずべき要件存せざるに至ったものといわなければならない。従って本件附加金の請求も認容しうべき限りでない。