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ID番号 00524
事件名 解雇無効確認請求控訴事件
いわゆる事件名 平安学園事件
争点
事案概要  無断欠勤及び勤務成績不良を理由とする懲戒解雇につき、労働基準法二〇条の予告、民法六二七条一項の予告もなされなかったと主張された例。
参照法条 民法627条
労働基準法20条
体系項目 解雇(民事) / 解雇予告 / 労基法20条と民法627条
解雇(民事) / 解雇予告手当 / 解雇予告手当の支払方法
裁判年月日 1958年9月10日
裁判所名 大阪高
裁判形式 判決
事件番号 昭和30年 (ネ) 261 
裁判結果
出典 労働民例集9巻5号816頁
審級関係
評釈論文 加藤俊平・ジュリスト183号66頁
判決理由  〔解雇―解雇予告―労基法20条と民法627条〕
 尤も民法第六二七条第二項は、期間を以て報酬を定めた雇傭契約の場合には、次期に対してのみ解約の申入をなすことを得るものとし、且右申入は当期の前半においてこれを為すことを要するものと定めているから、労働基準法第二〇条第一項に関する前記の解釈は、控訴人のように月俸を受ける被傭者の解雇について異る結論を生じるものであるか、否かについて、更に検討するに、民法第六二七条第二項の右規定は、同条第一項によって雇傭契約解約の予告期間が二週間と定められていることと関連して少くとも月の後半に右予告期間を経過せしめることにより(従って予告期間は平年二月を除き月の後半において一日もしくは二日間だけ伸長されることになり、これに月の前半において経過する日数を加へたものになる。)翌月一日より解雇の効力を発生せしめることとし、よって他に就職の機会を得た被傭者が翌月一日より完全就労しその報酬の全額を取得し得るようにしようとの立法上の配意に出たものと解し得るところ、労働基準法第二〇条第一項によって右の予告期間が少くとも三十日と改められた以上は解雇の予告を月の前半になすことを要することとし以て間接に少くとも月の後半を予告期間たらしめた民法第六二七条第二項の規定はその適用の余地がなく、労働基準法第二〇条第一項に関する前記の解釈は月俸を受ける被傭者についてもそのまま適用せられるものと解すべく、従って使用者はその時期にかかわりなく、三十日以上の平均賃金に相当する金員を支払って、右月俸を受ける被傭者を即時解雇し得るものといわねばならぬ。
 〔解雇―解雇予告手当―解雇予告手当の支払方法〕
 右Aは、昭和二十九年七月三十一日の理事会において、控訴人を解雇することの止むを得ない事情を報告して意見を求める一方、その頃控訴人に対して口頭を以て解雇の予告をなし更に同年九月十七日にも重ねて同趣旨の予告をした上、同年十月一日に九月三十日附の「B高等学校主事兼C中学校主事を解く」とした解雇辞令を控訴人に交付すると共に、従来教職員の退職に当っては、その月俸の半額に、勤続年数を乗じた金額を退職手当金として任意支給した慣例に準じて、当時の控訴人の月俸額金一万七千八百円の半額に当る金八千九百円に、その勤続年数十四年を乗じた金十二万四千六百円の退職手当金を支給することを告げ、且即時これを提供して控訴人を解雇した。その際控訴人は右解雇辞令については異議なくこれを受領したが、退職金については、被控訴学園経理主任Dに対して一時これを預かり置くことを依頼したが、その後数日を経て右経理主任よりこれを受領した。以上の事実を認定することができる。
 (中 略)
 そこで右雇傭契約の解約は果して適法になされたものであるか否かについて判断するに、凡そ期間の定めのない雇傭契約の解約については、民法第六二七条、第六二八条の定めるところであるが、右民法の一般規定は、労働基準法第二〇条第二一条の特別規定によって修正せられており、更にこれについて労働協約の定めがある場合にはこれによることを要することは勿論である。而して労働基準法第二〇条第一項は、使用者が労働者を解雇しようとする場合においては、少くとも三十日前にその予告をなすか、又はその予告をしない場合には、三十日分以上の平均賃金を支払うことを解雇の有効要件として定める一方、使用者が三十日分以上の平均賃金を支払うときは、特に雇傭期間の定めある場合を除き、即時に労働者を解雇し得ることを認めたものであって、而もこの場合における金員の支払は如何なる名目を以てなされるかを問はぬものと解するを相当とする。