全 情 報

ID番号 00525
事件名 仮処分申請事件
いわゆる事件名 十和田観光電鉄事件
争点
事案概要  会社のバス運転手又は車掌がバス料金を横領したとして懲戒解雇されたのに対し、右解雇は不当労働行為としてなされたものである等主張して地位保全の仮処分をした事例。(申請却下)
参照法条 労働基準法20条,89条,90条,106条
体系項目 就業規則(民事) / 意見聴取
就業規則(民事) / 就業規則の届出
就業規則(民事) / 就業規則の周知
懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務上の不正行為
解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力
裁判年月日 1959年3月2日
裁判所名 青森地八戸支
裁判形式 判決
事件番号 昭和33年 (ヨ) 39 
裁判結果
出典 労働民例集10巻2号107頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔就業規則―意見聴取、就業規則の届出、就業規則の周知〕
 就業規則作成後、使用者が、労働基準法第八九条第九〇条及び同第一〇六条所定の手続を採ったか否か共にその疎明を欠くが、右いずれも就業規則の効力発生要件ではない。
 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―職務上の不正行為〕
 申請人等は本件懲戒解雇処分をもって苛酷なる処分であるから解雇権の濫用であると主張するけれども、会社は地方鉄道業、旅客自動車運送業を主たる営業内容とするものであるから、その料金の適確なる徴収は会社経営の基礎をなしその存続の重大要件をなすものであることは自明の理であり、申請人等のかかる料金横領の行為は会社経営の基礎を脅やかし、その存続を危やふくするものであるから、申請人等を職場より排除し、料金の適確なる徴収を計り会社経営の基礎を維持確立することは、会社経営上已むことを得ざるものと解することは決して無理とは謂えず、従って本件解雇をもって解雇権の濫用であると謂うことはできない。この理は、申請人の主張するその横領日時、横領金額の多寡、公訴提起の有無等により、その結論を異にするものではないと解するを相当とする。
 〔解雇―労基法二〇条違反の解雇の効力〕
 懲戒解雇たると否とを問はず解雇予告手当を支払わずに労働者を即時解雇することは、労働基準法第二〇条第一項但書所定の事由のない限り違法であるけれども、(一)使用者の意思が必ずしも即時解雇を固執する趣旨でないと認められる場合には、解雇の意思表示があった日から三〇日を経過したとき、(二)後に解雇予告手当を現実に提供したとき、(三)解雇が「労働者の責に帰すべき事由」に基くものであることにつき、所轄労働基準監督署長の認定を受けたとき等は同法第二〇条の趣旨に照し右のような即時解雇も有効となるものと解するを相当とする。