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ID番号 00530
事件名 賃金支払請求控訴事件
いわゆる事件名 北井工業事件
争点
事案概要  予告も予告手当の支払もなしに解雇された原告が、解雇後一年余り経過してから予告手当の支払を受けたので、予告手当の支払まで雇用関係が継続していたとしてこの間の賃金を請求した事例。(一審 棄却、控訴棄却)
参照法条 労働基準法20条,114条
体系項目 解雇(民事) / 解雇の承認・失効
解雇(民事) / 解雇予告手当 / 解雇予告手当請求権
解雇(民事) / 労基法20条違反の解雇の効力
雑則(民事) / 附加金
裁判年月日 1966年10月27日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和41年 (ネ) 1418 
裁判結果 棄却
出典 時報467号61頁/東高民時報17巻10号245頁/タイムズ205号180頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇の承認・失効・解雇予告手当―解雇予告手当請求権〕
 従って解雇予告を受けた労働者は爾後三〇日間尚労務に服しその間の賃金の支払を受けるか、予告なく解雇された者は三〇日分以上の平均賃金の支払を保障されているのであるから使用者が解雇の予告もせず、予告手当の支払もしないで解雇の通告をした場合でも使用者が即時解雇を固執する趣旨で通告したものなら解雇通告は無効というべきであるが然らざる限り労働者は通告受領後も三〇日間は引続き労務に従いその間の賃金の支払を受けるか、或いは予告手当に相当する三〇日分以上の平均賃金の支払を受け得る権利を有すると解するのが相当である。(昭和三五年三月一一日最高裁判所第二小法廷、昭和三〇年(オ)第九三号判決参照)
 〔解雇―労基法20条違反の解雇の効力〕
 控訴人の主張によれば被控訴人は昭和三八年三月一四日控訴人に対し予告手当も支払わず「明日からやめて貰う」と解雇を通告したので控訴人は同月一六日川崎南労働基準監督署を通じ解雇予告手当支払請求の手続をしたうえ帰郷し爾来開墾作業に従っていたというのであるから主張自体控訴人は被控訴人のなした解雇を承認したが故に同月一五日以降は労務の提供をせず解雇予告手当の請求をしたことを自認するにほかならず従って本件雇傭関係は控訴人の解雇承認により昭和三八年三月一四日限り終了したと認むべきであり同日までの賃料が支払済であることは控訴人の自認するところであるから被控訴人は控訴人に対し負担する賃料債務は皆無であってただ予告手当の支払義務のみを負担していたと認めるのが相当である。
 〔雑則―附加金〕
 控訴人は本訴請求金額を労働基準法第一一四条に基いて請求すると主張するものの如くであるが第一一四条による附加金の支払義務は原判決が説示する通り当然に発生するものではなく裁判所が支払を命じて始めて生ずるものであり本件のように既に法が定める予告手当が支払われた後には使用者に対し附加金支払の請求を申立ることができないと解するのが相当である。