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ID番号 00565
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 筑豊貨物自動車事件
争点
事案概要  賍物運搬の被疑事件で検挙され新聞に報道されたことを理由に会社の信用を著しく失墜させたとして解雇された労働者が解雇の意思表示の取消および賃金の支払を求めて訴えた事例。(原告敗訴)
参照法条 労働基準法20条1項
体系項目 解雇(民事) / 解雇事由 / 犯罪の嫌疑
解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 労働者の責に帰すべき事由
裁判年月日 1952年5月27日
裁判所名 福岡地久留米支
裁判形式 判決
事件番号 昭和26年 (ワ) 193 
裁判結果
出典 労働民例集3巻2号181頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―解雇事由―犯罪の嫌疑〕
 前示認定の如く原告が、賍物運搬容疑で久留米市警察署に逮捕され、此の事が、新聞紙上に報道されたことが原告を解雇する理由として妥当なものであるかどうかを検討する、被告会社は斯る被疑事実は被告会社の就業規則第六十三条第三号「不都合の行為があったとき」に該当する不信行為である旨主張するけれども、右被疑事件は理由は詳かでないが(原告は嫌疑なしとの理由によると主張する)検察庁において不起訴処分となったことは、当事者間に争のないところである。されば、結果から見るときは、斯る嫌疑を受け、それが新聞紙に報道されたことにより、多少又は一時的に被告会社の信用を失墜し、営業上不利益を蒙ったとしても、此のことのみにより解雇することは余りにも、早計にして、苛酷であり、之を以て解雇以外の之よりも軽度の他の方法による懲戒を加えることなれば、格別、被告会社が定めた前示就業規則第六十三条第三号の不都合の行為があったときに該当するものとして解雇の事由とすることは、穏当でないものと謂わねばならない。
 〔解雇―解雇予告と除外認定―労働者の責に帰すべき事由〕
 被告会社は、原告の前示被疑事実を以て前記の如く就業規則に違反するものとし、労働基準法第二十条第一項但書後段「労働者の責に帰すべき事由に基いて解雇する場合」に該当するものとして、前記の如く久留米労働基準監督署に対し解雇予告除外認定の申請をし同署において之を理由あるものとして認可したのであり原告は人権擁護委員等を頼み右認定の取消を要求したが取消されるに至らなかったものである故に原告に対する右被疑事件が仮令即時解雇の事由として妥当を欠くものとはいえ該認定が取消されずに現存し被告会社が右認定に基き即時解雇の通告をした以上裁判所として被告会社に対し右解雇の意思表示の取消を命ずることはできないものといわねばならない。