ID番号 | : | 00581 |
事件名 | : | 雇用関係存続確認請求 |
いわゆる事件名 | : | 古河鉱業高崎工場事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 会社の機密事項を社外の不特定多数の者に漏洩したこと、勤務成績不良等を理由として労働協約、就業規則に基づいて懲戒解雇された労働者らが、従業員として雇用契約上の権利を有することの確認および賃金の支払を請求した事例。(請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法20条1項,89条1項9号 |
体系項目 | : | 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 守秘義務違反 解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 除外認定と解雇の効力 |
裁判年月日 | : | 1975年3月18日 |
裁判所名 | : | 前橋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和39年 (ワ) 145 |
裁判結果 | : | 棄却 |
出典 | : | 労働判例221号19頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | 〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―守秘義務違反〕 原告らには、被告の主張するような「故意に会社の重大な機密を漏洩し、業務に支障を生ぜしめた重大な義務違反行為」があった。ただ、原告らが「高崎工場三ケ年計画基本案」という重大な機密文書を入手するについては、それ自体違法な行為によったのではなく、会社の目をかすめてひそかに入手していた他の従業員から貸与されて一時所持していた訴外Aから、更に、特に所望して借り出したものである。それで、原告らがその文書の内容を探知したこと自体は、会社に対する重大な義務違反とまでは言えないかもしれない。また、もし原告らが、その知った機密を第三者には秘する特別の措置を講じた上で組合の執行機関に諮り、その決定に従って正当に組合活動のために利用していたのなら、その限りにおいて、その秘密漏洩行為は不法性を阻却していたかもしれない。しかしながら原告らは、そのような特別の措置を講じなかっただけでなく、かえって、日本共産党西毛地区委員会古河細胞の細胞長ないし班長の資格において、この機密を同党の組合対策活動(つまり、被告会社における労働組合活動への外部からの介入)に利用しようと企て、右文書をそっくりそのまま労働組合運動とは全く関係のない営業上の極秘事項までも含めて複製し、全文を秘密党員である多数の古河細胞員に配布したほか、被告会社とは何等関係のない第三者である日本共産党の上部機関構成員にも配布して、機密を不特定多数人に暴露したものである。この点において、原告らの右行為は、被告会社に対する重大な義務違反である。 《証拠略》によれば、原告らの右行為は、被告が抗弁事実第七項で主張する労働協約と就業規則所定の懲戒事由に該当する。 (中 略) 仮に被告会社が、原告らが共産党員として抱く政治的思想を嫌悪し、かつ原告らの反会社的行動がそのような思想信条に基くものであったとしても、前記認定のように原告らに現実の業務上の重大義務違反行為が存する以上、本件解雇を思想信条に基く差別的取扱となすべき理由はない。従って、本件解雇は、法の下の平等を規定する憲法第一四条に違反せず、また思想及び良心の自由を規定する同法第一九条にも違反せず、更にまた、思想信条により差別的取扱を禁ずる労働基準法第三条にも違反しない。そして、被告の本件解雇は、上記のように原告らの勤労者の団結権を侵害するものでなく、また不当労働行為となる解雇でもないし、使用者による労働組合活動への支配介入でもないから、憲法第二八条、労働組合法第七条第一号、第七号にも違反しない。更にそれは、信義誠実の原則にも違反せず、解雇権の濫用にも該当しないから、民法第一条第二項、第三項にも違反しない。 以上の次第で、原告らが本件解雇を無効とする主張は、すべて理由がない。 〔解雇―解雇予告と除外認定―除外認定と解雇の効力〕 労働基準法第二〇条第一項但書の解雇予告手当除外認定は、原告らを解雇した後でなされていても解雇自体の効力に影響を及ぼさない |