全 情 報

ID番号 00582
事件名 地位保全等仮処分申請事件
いわゆる事件名 東京プレス工業事件
争点
事案概要  六ケ月間に遅刻が二四回、欠勤が一四日に及んだことが労働協約及び就業規則所定の懲戒解雇事由に該当するとして懲戒解雇された申請人が、地位保全及び賃金支払の仮処分を求めた事例。(却下)
参照法条 労働基準法20条3項,89条1項9号
体系項目 懲戒・懲戒解雇 / 懲戒事由 / 職務懈怠・欠勤
解雇(民事) / 解雇予告と除外認定 / 除外認定と解雇の効力
裁判年月日 1982年2月25日
裁判所名 横浜地
裁判形式 判決
事件番号 昭和52年 (ヨ) 544 
裁判結果 却下
出典 タイムズ477号167頁/労経速報1117号3頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔懲戒・懲戒解雇―懲戒事由―職務懈怠・欠勤〕
 (二) 右(一)認定のとおり、申請人の昭和五一年九月から昭和五二年二月までの六カ月間の遅刻回数は二四日、欠勤回数は一四日であり、この間、申請人が就労すべき日数は、前掲証拠によれば、合計一二四日(別紙(二)遅刻、欠勤一覧表(一)出勤日数欄、欠勤日数欄及び有給休暇日数欄の合計)であることが一応認められるから、完全な就労をした日数は全体の六九パーセント強にすぎないことは被申請人主張のとおりである。
 2 ところで、(書証・人証略)を総合すれば、被申請人においては、従業員が遅刻又は欠勤する場合には、事前に電話あるいは同僚にことづける形で所属係長又は課長に連絡すべきことが、それぞれ定められていたものと一応認められるところ、(書証・人証略)を総合すると、申請人の前記遅刻、欠勤は、昭和五一年一二月頃の一回の遅刻を除きすべて事前の届出がなかったことが一応認められ、右認定に反する(書証略)中の記載は右各証拠に照らして措信し難く、事前に届出のない遅刻、欠勤は、被申請人の業務、職場秩序に混乱を生ぜしめるものであることが明らかであるから、以上によれば、申請人には就業規則第四一条第三号、労働協約第三〇条第三号の「正当な理由がなく遅刻、早退または欠勤が重なったとき」との懲戒解雇事由があったものと一応認められる。
 〔解雇―解雇予告と除外認定―除外認定と解雇の効力〕
 2 ところで、労働協約及び就業規則の規定は、その体裁からして労働基準法第二〇条第三項のいわゆる除外認定の制度をとり入れたものとみられるところ、同条による除外認定は、解雇予告手当金を支給しないで即時解雇することのできる同条第一項ただし書の事由があることにつき行政監督上の確認を受けるべきことを定めたもので、それ以上に懲戒解雇事由の存否や懲戒解雇の相当性についての確認を受ける趣旨までを含むものとは考えられず、また、労働協約及び就業規則の右認定制度も労働基準法上の除外認定と同様に行政官庁の除外認定を受けるべき公法上の義務を明示したものにすぎず、懲戒解雇権を行政官庁の除外認定にかからせて自律的制限を加えた趣旨と解することができないから、この点についての申請人の主張も理由がない。