ID番号 | : | 00606 |
事件名 | : | 雇用関係存在確認等請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 古河鉱業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 既婚者を中心とした女子工員という整理解雇の対象に含まれるとしてなされた再三の退職勧奨を拒否した女子工員が、就業規則の「已むを得ない事業上の都合によるとき」にあたるとして解雇されたのに対し、右解雇は性による差別待遇にあたり無効である等として雇用関係の存在確認等求めた事例。(請求棄却) |
参照法条 | : | 労働基準法3条 民法627条 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性 |
裁判年月日 | : | 1970年11月5日 |
裁判所名 | : | 前橋地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ワ) 332 |
裁判結果 | : | 棄却(控訴) |
出典 | : | 労働民例集21巻6号1475頁/時報615号9頁/タイムズ257号186頁 |
審級関係 | : | 上告審/00617/最高一小/昭52.12.15/昭和51年(オ)1240号 |
評釈論文 | : | 阿久沢亀夫・労働法学研究会報886号1頁/宮本安美・法学研究〔慶応大学〕44巻4号106頁/青木宗也ほか・労働法律旬報769・770合併号3頁 |
判決理由 | : | 高崎工場では、右のように工員一〇名が剰員となったので、次の各理由により、既婚者を中心とする女子工員に退職を求めることとした。 女子(当時全部で三〇数名であった)を対象とする理由としては、〔1〕前記新機構案によって廃止、縮小された業務に従事していたのが大部分女子であること、〔2〕高崎工場で製造している製品の性格からして女子の就労に適する直接部門の職場がなく(当時直接部門で就労している女子工員は研削に従事する者一名のみであった)、従って女子を直接部門に配置転換するのは困難であったこと。 さらに、特に既婚女子(当時全部で八名であった)を対象とする理由としては、〔3〕右〔1〕の女子がたまたま大部分既婚女子であったこと、〔4〕従来女子工員は結婚すると退職する者がほとんどであり、そうでなくても結婚後永くは在職しなかったこと、〔5〕既婚女子は通常夫と共稼ぎをしており、退職しても一応生活には困らないこと。 (中 略) 被告が右のように人員整理の対象として既婚者を中心とする女子を選定したことは、前記二で判断したように人員整理自体が企業の運営上必要やむを得ない措置である以上は、前記〔1〕ないし〔5〕の理由(〔1〕ないし〔4〕の事実は(一)掲記の各証拠によってこれを認めることができる。〔5〕の事実は当裁判所に顕著である。)ことに夫の稼働している既婚女子が退職して被告から賃金を得られなくなることにより被る不利益がそれ以外の工員が退職した場合のそれに比して通常は少いことを考えれば、合理的な措置であったと認めることができる。 (中 略) 原告は、本件解雇は原告が既婚女性であることを理由とするものであって、憲法、労働基準法に違反し無効であると主張するが、女子労働者が婚姻した場合には当然退職するものとするいわゆる結婚退職制や女子について男子より若い定年を定めるいわゆる女子若年定年制のように、既婚女子や高年令女子を企業の具体的事情如何にかかわらず制度的に差別するものであれば格別、本件解雇の場合は、前述したように企業の合理化のため被用者を解雇する必要に迫られ、その対象者として諸般の事情を考慮した結果解雇に最適の者として選ばれた者が、既婚の女子である原告であったというのであるから、本件解雇は原告主張の各法条に違反するものではない。 |