全 情 報

ID番号 00630
事件名 地位保全等仮処分申請控訴事件
いわゆる事件名 東洋酸素事件
争点
事案概要  使用者がなした製造部門全面閉鎖に伴う整理解雇につき、就業規則の定める「やむをえない事業の都合によるとき」には当たらないとして従業員の地位の保全等を認めた原審の取消を求めた事例。
参照法条 民法627条
労働基準法89条1項3号
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性
裁判年月日 1979年10月29日
裁判所名 東京高
裁判形式 判決
事件番号 昭和51年 (ネ) 1028 
裁判結果 破棄自判(上告)
出典 労働民例集30巻5号1002頁/時報948号111頁/東高民時報30巻10号259頁/タイムズ401号41頁/労経速報1030号13頁/労働判例330号71頁
審級関係 上告審/最高一小/昭55. 4. 3/昭和55年(テ)4号
評釈論文 秋田成就ほか・労働判例330号4頁/小西國友・昭和54年度重要判例解説〔ジュリスト718号〕250頁/盛誠吾・労働判例341号15頁/盛誠吾・労働判例342号4頁
判決理由  特定の事業部門の閉鎖に伴い右事業部門に勤務する従業員を解雇するについて、それが「やむを得ない事業の都合」によるものと言い得るためには、第一に、右事業部門を閉鎖することが企業の合理的運営上やむをえない必要に基づくものと認められる場合であること、第二に、右事業部門に勤務する従業員を同一又は遠隔でない他の事業場における他の事業部門の同一又は類似職種に充当する余地がない場合、あるいは右配置転換を行ってもなお全企業的に見て剰員の発生が避けられない場合であって、解雇が特定事業部門の閉鎖を理由に使用者の恣意によってなされるものでないこと、第三に、具体的な解雇対象者の選定が客観的、合理的な基準に基づくものであること、以上の三個の要件を充足することを要し、特段の事情のない限り、それをもって足りるものと解するのが相当である。以上の要件を超えて、右事業部門の操業を継続するとき、又は右事業部門の閉鎖により企業内に生じた過剰人員を整理せず放置するときは、企業の経営が全体として破綻し、ひいては企業の存続が不可能になることが明らかな場合でなければ従業員を解雇し得ないものとする考え方には、同調することができない。
 (中 略)
 なお、解雇につき労働協約又は就業規則上いわゆる人事同意約款又は協議約款が存在するにもかかわらず労働組合の同意を得ず又はこれと協議を尽くさなかったとき、あるいは解雇がその手続上信義則に反し、解雇権の濫用にわたると認められるとき等においては、いずれも解雇の効力が否定されるべきであるけれども、これらは、解雇の効力の発生を妨げる事由であって、その事由の有無は、就業規則所定の解雇事由の存在が肯定されたうえで検討されるべきものであり、解雇事由の有無の判断に当たり考慮すべき要素とはならないものというべきである。