全 情 報

ID番号 00632
事件名 解雇無効確認等請求事件
いわゆる事件名 日本スピンドル製造事件
争点
事案概要  使用者がなした整理解雇につき、解雇事由は存しない等として、無効の確認を求めた事例。
参照法条 民法1条3項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の回避努力義務
裁判年月日 1980年2月29日
裁判所名 神戸地尼崎支
裁判形式 判決
事件番号 昭和50年 (ワ) 319 
裁判結果 棄却
出典 労働判例337号50頁/労経速報1044号13頁
審級関係
評釈論文
判決理由  〔解雇―整理解雇―整理解雇の要件〕
 本件解雇は、以下に検討するとおり、余剰人員削減のためのいわゆる整理解雇であるが、このような解雇が有効とされるためには、第一に、人員整理の必要性、すなわち、企業が客観的に高度の経営危機下にあり、解雇による人員整理が必要やむを得ないものであること(その前提として、解雇回避のための経営努力が尽されていることが必要である。)、第二に、解雇実施に至る手続が、労使間の信義則にかなうものであること、第三に、被解雇者の選定にあたっての人選基準が合理性を有し、かつその具体的な適用も合理的かつ公平であることの各要件を充足することが必要であり、もし右の要件に欠ける場合には、その解雇は、解雇権の濫用による解雇としてその効力は否定されるものと解するのが相当である。
 なお原告らは、右第一の要件に関して、人員整理を行わなければ企業の存続維持が不可能になるほどの経営危機が現実に生じていることが必要であると主張するが、人員整理の必要性につき右のごとき厳格な要件を課すことは、安易に人員整理の方法による経営危機の回避が計られるようなことがあってはならないことは勿論であるとはいえ、経営状況の分析・予見につき、経営者にあまりに過大な危険を負担させる結果となり、経営権ないしは経営の自由に対する制約としては大幅に過ぎるといわざるを得ず、採用し難い。
 〔解雇―整理解雇―協議説得義務〕
 整理すべき余剰人員については、前記認定事実に照らし、被告が三〇〇名の削減枠を決定したことは、十分その妥当性を肯認しうる。もっとも、後述するように、被告は組合との団体交渉の過程で右削減枠を二六〇名とし、最終的には二五〇名の削減にとどまったが、これは後記認定のとおり、被告が、早急に労使関係を正常に復して、人員整理を含む会社再建計画の早期達成を期すべく、あえて削減枠の点で組合に譲歩した結果なのであるから、何ら右三〇〇名の削減の妥当性を左右するものではない。さらに、最終的な削減人員が二五〇名となった経緯が右のとおりであることからすれば、後述するように二三六名の希望退職者が出た段階でも、なお削減枠に達するまでの人員を指名解雇することはやむを得ないものとして認めざるを得ない。