全 情 報

ID番号 00635
事件名 仮処分決定に対する異議申立事件
いわゆる事件名 北陸金属工業事件
争点
事案概要  黄銅棒の製造を主たる目的として設立された会社において、経営の行詰まりを理由としてなされた整理解雇について被解雇者がなした地位保全仮処分申請にかかわる却下決定に対して被解雇者より異議申立がなされた事例。
参照法条 民法1条2項
体系項目 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件
裁判年月日 1981年3月31日
裁判所名 富山地礪波支
裁判形式 判決
事件番号 昭和55年 (モ) 4 
裁判結果 認可
出典 労働判例368号52頁
審級関係
評釈論文
判決理由  以上のような、労働契約の背景並びに機能を考え合わせると、企業が整理解雇をなすにあたっては、労働契約を支配する信義則から、次の要件を具備することを要するものと解せられる。
 すなわち、第一に当該人員を削減しなければ企業経営が成り立っていかないこと、第二に解雇に至るまでに、解雇以外の、企業において通常なされ得る利潤追求のための合理的な措置がとられていること、第三に人員削減をなすにあたり、労働組合又は労働者の代表に対して、事前にその必要性を具体的に開示し、人員削減の必要性、その時期、規模、手段等に関して協議をなし、右労働組合等の納得を得るために十分な努力をしていること、第四に被解雇者の選定が企業の恣意ではなく、合理的基準によっていること、換言すれば、他の労働者に比較して被解雇者が解雇されるべき合理的理由が存在すること、以上の各要件を具備することを要し、右要件の一つでも欠缺すれば当該整理解雇は信義則に反し、解雇権の濫用として無効とされなければならない。
 (中 略)
 債務者会社が労使間の協定内容を一方的に無視し、削減予定人員が二名未達であることが明らかになった時点で組合が人員削減の問題について団体交渉を申し入れているにも拘わらず、右申入れを無視して本件解雇に至ったことは組合無視の態度と評されてもやむを得ないものであり、右経緯に照らすと、債務者会社は本件解雇をなすにつき組合を納得させるに足る十分な努力をしたものと認めることはできないのである。
 (中 略)
 叙上のとおりであって、債務者会社の本件解雇に至る過程においては、債務者会社は労使間の信義に反する協定の解釈をなし、それを根拠にして、組合の十分な納得を得る努力をすることなく本件解雇に及んだものというべきであり、信義則に反する解雇権の行使であると判断せざるを得ない。