ID番号 | : | 00647 |
事件名 | : | 地位保全仮処分申請事件 |
いわゆる事件名 | : | 平野工業事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 勤務成績不良を理由として解雇されたアルバイトが、右解雇は無効であるとして地位保全等求めた事例。(申請一部認容) |
参照法条 | : | 労働基準法21条 民法1条3項 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 解雇事由 / 職務能力・技量 解雇(民事) / 解雇権の濫用 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇基準・被解雇者選定の合理性 |
裁判年月日 | : | 1984年3月23日 |
裁判所名 | : | 大阪地 |
裁判形式 | : | 決定 |
事件番号 | : | 昭和58年 (ヨ) 1946 |
裁判結果 | : | 一部認容 |
出典 | : | 労働判例429号57頁/労経速報1192号12頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 諏訪康雄・季刊実務民事法6号224頁 |
判決理由 | : | 〔解雇―解雇事由―職務能力・技量〕 右2、3の事実により勤務成績不良の理由につき検討するに、被申請人は理由(1)の事実についてはその後、とがめることなく事務職に配置換えしており、(2)の売上請求書の作成の遅れと(3)の事実によれば、申請人が請求書の作成とコンピューターの入力作業が若干遅かったことが認められるけれども申請人を安全推進委員に選任し、又申請人に退職要求した後、特に事務作業が繁雑になった事情もないのに二名の事務職員を採用したことが認められるから、これらを総合的に考えると、本件において申請人の勤務成績が不良であったと評価することは相当でない。更に淀鋼が申請人をコンピューター作業から配転するよう求めたということも、右3の(二)の事情からなされた可能性も否定できず、そのことから直ちに申請人のコンピューターの入力作業が著しく遅かったものと解することも相当でない。 従って本件解雇は申請人が就業規則第三〇条第二号の「技能著しく劣り発達の見込みがないと認めた時」に該当しないのに、被申請人がその解雇権を濫用してなしたものであって解雇の効力を生じないものとする外はない。 〔解雇―解雇権の濫用〕 臨時雇用者とは、本来は企業の一時的業務繁多又は労働者側の差支えその他特別な事情のためにある特定の期間を限って雇用され、更には特別の業務に従事する者、或は正社員となる前段階としての一時的な身分関係(試用期間等)をさすものであり、雇用契約の実質的内容において企業との結びつきが正社員に比して稀薄である。従って臨時雇用者の解雇は正社員の解雇に比して解雇権の行使が解雇権の濫用として無効とされる範囲が小さいものと解される。 〔解雇―整理解雇―整理解雇の基準〕 申請人が本来の意味の臨時雇用者に該当するかどうかは、具体的な雇用契約成立時の事情や契約期間ないし従事すべき職務の内容その他の契約条項並びに勤続期間その他諸般の事情を総合して実質的雇用関係が本来の臨時的なものであり、企業との結びつきの度合が一般従業員に比して稀薄であるかどうかによって判断すべきである。 (中 略) 右認定事実によれば、申請人はアルバイト(素人工)として採用され、当初数ケ月間は部材加工の現場作業員をし、その後は事務員として総務、庶務関係の仕事をし、昭和五七年二月のコンピューター導入後はその入力作業も担当していたこと、賃金は時間給であるが、勤務時間は午前八時半から午後五時までで正社員と全く異ならず、申請人は被申請人の恒常的業務のために期間の定めなく雇用され、本件解雇まで約三年五ケ月勤務していることが一応認められるので、申請人と被申請人との間の雇用関係は形式はアルバイトであっても、その実質は正社員と異ならないから、申請人は本来の意味の臨時雇用者にはあたらない。 |