ID番号 | : | 00650 |
事件名 | : | 解雇予告無効確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 四日市カンツリー倶楽部事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 経営危機を理由とするキャディー制度廃止に基づいて整理解雇された原告らが解雇の無効を主張し従業員としての地位確認と賃金支払及び慰藉料、弁護士費用の支払を求めた事例(一部認容)。 |
参照法条 | : | 民法627条 労働基準法89条1項3号 |
体系項目 | : | 解雇(民事) / 整理解雇 / 整理解雇の要件 |
裁判年月日 | : | 1985年5月24日 |
裁判所名 | : | 津地四日市支 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和59年 (ワ) 11 |
裁判結果 | : | 一部認容(控訴) |
出典 | : | 労働民例集36巻3号336頁/労働判例454号16頁/労経速報1247号16頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | |
判決理由 | : | (八)以上の認定によれば、被告の収支はなるほど形式的には赤字であり、かつその一つの要因としてキャディー従業員に対する相対的高賃金を挙げ得ることは事実としても、それのみが原因ではないばかりか、形式的にはクラブの収入として会計処理がなされているが実質的には被告に帰属するとみられる収入があり、これを考慮してその収支の実質をみると、被告は大幅な黒字であって、被告が主張するような経営危機は全く存せず、従ってその危機回避のためキャディー制度を廃止しなければならない事業上の必要性も存しないことが明らかである。 (九)もとより企業は、当面の経営危機は存しなくとも、企業の維持、発展を図り、併わせて将来の経営危機に備えるため、その経営者の責任と裁量において、経営合理化ないし費用節減の手段として、オートメーション機械等を導入するなどし、その結果生じた余剰人員を整理解雇することも、全く許されないわけではない。 しかし、右のようないわゆる予防型の整理解雇の場合は、企業が自己規制として定めた就業規則中の解雇事由(被告の就業規則では「やむを得ない経営上の事由」)の有無の判断は、目的と手段・結果との均衡の観点から、経営危機が継続、現存する場合の整理解雇、いわゆる緊急避難ないし防衛型の整理解雇に比して、より慎重、厳格になさるべきであろう。 これを本件について見るに、被告にその主張するような経営危機が全く存しなかったことは前示のとおりであって、本件キャディー全員の整理解雇は、電磁式カートの導入が決定・実施されていたことから、キャディー人件費の高負担に危機感を抱いた被告において、キャディー制度を廃止し、これによって生じた余剰人員を整理し、人件費の節減を図ったものと言わざるを得ない。しかして、すでに前示(一)項から(八)項で認定判断したように、被告の経営収支の実質は大巾な黒字であり、他方キャディー制度はゴルフ場経営と不可分一体の関係にあり、その廃止は、ゴルフ場の品格の低下やゴルフ場利用者の減少を招きかねず、いわばゴルフ場経営の根幹にかかわる問題であり、加えてキャディー制廃止による解雇は、被解雇者であるキャディーにとって、生活の基盤の破壊をもたらすものであるのに、被告は、これといった事前の調査、検討もなしに、たまたまゴルフ場利用者へのサービス向上等のために電磁式カートを導入していたことから、短絡的にキャディー制度を廃止し、即キャディーを解雇、しかも全員を解雇したものであって、右キャディー制度の廃止、キャディー全員解雇は、いかにも唐突で説得力に欠け、費用節減という目的に比して明らかに均衡を失するというべきである。 とすれば、本件整理解雇は、就業規則二七条四号の「やむを得ない経営上の事由」に該当しない違法無効な解雇というほかなく、被告の抗弁一は失当である。 |