判決理由 |
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原判決の引用する第一審判決は、同判決のいう第二表記載の上告人らについては、被上告会社の解雇通告に対し、右上告人らが所定期間内に退職願を出さなかったことにより、右期間の最終日である昭和二五年一一月五日の満了とともに解雇の効力を生じ、会社側がこの前提の下に退職金等を供託したに対し、上告人らは当初解雇の効力を争うことを断念しえず、退職願も出さず退職金も受け取らないでいたが、その後組合においても解雇を承認し会社側との抗争につき組合の支持を受けられないこととなったことその他諸般の事情にかんがみ、解雇の効力を争うことをあきらめ、かくして上告人らは、遅くとも昭和二六年一月九日までの間に、いずれも異議を止めず退職金等を受領し、しかも、その後本訴提起の時(昭和二八年六月三日)まで約二年数カ月の間何ら解雇の効力を争う態度を示していなかった、との事実を認定した上、かかる一切の事情にあらわれた当事者双方の態度にかんがみ、当事者間に解雇の効力につき異議を述べない旨の暗黙の合意が成立したものと認むべきであり、そうでなくとも、かかる事情の下で解雇の無効を主張することは信義則に反することとなるから許されない旨を判示した趣旨と解すべきであり、右判断は正当である。所論の供託の法理いかんは、右判断に影響を及ぼすものではなく、また、上告人らが生活のためないし解雇反対闘争のため退職金を受けとらざるを得なかったということは、右合意を成立せしめるに至った事情ないし内心の動機をなすに過ぎないものと解されるので、このことは、前記事実関係の下で、解雇の効力に異議を述べない旨の合意が成立したと解することに何らの妨げとなるものではない。 |