ID番号 | : | 00667 |
事件名 | : | 雇用関係存在確認請求事件 |
いわゆる事件名 | : | 京都ホテル事件 |
争点 | : | |
事案概要 | : | 第二組合を結成しこれに加入していた従業員が、会社と第一組合とのユニオンショップ協定に基づき解雇されたのに対し、右解雇は不当労働行為にあたり無効であるとして雇用関係の存在確認等求めた事例。(雇用関係の存在確認と未払賃金の支払の請求のみ認容) |
参照法条 | : | 労働基準法11条,12条,115条 |
体系項目 | : | 賃金(民事) / 賃金請求権の発生 / 無効な解雇と賃金請求権 賃金(民事) / 賃金の支払い原則 / 賃金請求権と時効 解雇(民事) / ユニオンショップ協定と解雇 雑則(民事) / 時効 |
裁判年月日 | : | 1970年1月17日 |
裁判所名 | : | 京都地 |
裁判形式 | : | 判決 |
事件番号 | : | 昭和41年 (ワ) 23 |
裁判結果 | : | |
出典 | : | 労働民例集21巻1号15頁/時報595号93頁/タイムズ243号158頁 |
審級関係 | : | |
評釈論文 | : | 萩沢清彦・判例タイムズ247号105頁 |
判決理由 | : | 〔賃金―賃金請求権の発生―無効な解雇と賃金請求権〕 解雇が無効である場合の賃金額は、特段の事情がない限り解雇前三カ月間の平均賃金を基礎として計算するのが相当であり、賞与が支給されている場合はその金額は右賃金額に加算すべきである。けだし、使用者が労働者に対して支払う金員は、使用者と労働者との間の使用従属関係のもとで行なわれた労働に対する報酬として支払われたものであるから、賞与の名義で交付されたとしてもその実態は賃金であるというべきこと労働基準法第一一条の規定に照し明らかであるからである。。 〔賃金―賃金の支払い原則―賃金請求権と時効〕 〔雑則―時効〕 賃金債権は雇傭関係の存在を前提として発生するものであり、雇傭関係存在の確認を求める訴は雇傭関係という基本的法律関係より発生する賃金債権を実現する手段としての性質を有するものであって、このような手段に出でたる場合においては、たとえ賃金債権自体について給付訴訟を提起しなかったとしても、これをもって「権利の上に眠る者」ということはできないから、原告らの昭和四一年一月六日以降の賃金債権についての時効は同年同月一七日になされた本件訴の提起により中断されたものと解するのが相当である。 〔解雇―ユニオンショップ協定と解雇〕 このように同一企業内に二組合が併存している場合、本件のようにたとえ一の組合が、他の組合と会社との間にユニオンショップ協定を締結した後に結成されたものであってもその一方が締結しているユニオンショップ協定は他方の組合員には及ばないものと解するのが相当である。けだし、憲法第二八条がすべての労働者に対して団結権及び団体交渉権を保障している点からして、労働組合法第七条第一号但書においてユニオンショップ協定が不当労働行為とならない旨規定されている趣旨は、労働者の団結権をより強く保障することにあるのであって、一つの団結をもって他の団結を圧迫することを認容しているものではないと解すべきところ、当該労働者が自主性のある労働組合に加入して憲法により保障された団結権並びに団体交渉権を行使しその組合の力で自主的に労働条件の改善を図っている以上、他の労働組合が使用者との間に締結しているユニオンショップ協定の効力を右労働者に及ぼすことは、締約組合の団結をもって他の労働組合の団結を圧迫する結果となり、とうてい許されないものといわなければならないからである。 (中 略) 叙上の理由により、原告らに対しては本件ユニオンショップ協定の効力は及ばないというべきであるにもかかわらず、本件解雇は、右ユニオンショップ協定を適用してなされたものであるから、本件解雇に正当な理由が存在するものということはできず、従って自余の点につき判断するまでもなく、本件解雇は無効にして、原告らと被告との間には、なお雇傭関係が存在するものといわなければならない。 |